「ルーン文字」にはどんな歴史がある?
ルーン文字とは、古代から中世にかけてゲルマン人が用いた文字で、彼らが住んでいた中央ヨーロッパ〜スカンディナヴィアで広く使われました。
その始まりは謎に包まれていますが、これまでの研究で、だいたい2〜3世紀頃に成立したと言われています。
ルーン(rune)とは、ゲルマン諸語の一つであるゴート語で「秘密」を意味する言葉です。
起源については、北イタリアのエトルリア人が使っていた文字から派生した説や、アラビア語から入ってきた文字を作り変えた説がありますが、どちらも定かでありません。
その一方で、北欧神話では最高神オーディンが生み出した文字として伝えられています。
伝承によると、オーディンは世界のあらゆる知恵を手に入れたいと考え、自らを生贄に捧げる儀式を行いました。
世界樹のユグドラシルで9夜にわたって首を吊り、槍に体を貫かれ、生死をさまよう中でつかみ取ったのが「ルーン文字」です。
ルーン文字によりあらゆる魔術を使えるようになったオーディンは、神々の中の最高位に上り詰めました。
その後、ルーン文字は光の神・ヘイムダルによって人間にもたらされます。
ヘイムダルは千里眼と鋭い聴覚の持ち主で、神々と人間の国の境にある虹の橋「ビフレスト」で番人をしていました。
彼が人間の国を旅している際、ある夫婦の家に泊めてもらい、のちに夫婦の間に生まれた子どもにルーン文字を授け、そこから人間の国に広まっていったといいます。
こうした神話の流れを受けてか、ルーン文字はとても強い魔力を秘めた文字として扱われました。
ルーン文字は日常の筆記の他に占いや呪術に用いられ、病気や危険の防御、恋愛や出産の祈願、相手に危害を与える呪いなどとして使われたという。
これもファンタジーで引っ張りだこになる要因でしょう。
ルーン文字が刻まれた遺物としては、武器や日用品、宝石、貨幣が見つかっています。
その中で最も多いのが石で、これを「ルーン石碑(runestone)」と呼びます。
スカンディナヴィア地域では過去に約6000のルーン石碑が確認されており、特に700年から1100年頃のヴァイキング時代に最も多く作られました。
現状最古のルーン石碑は、スウェーデンのゴットランド島で発見された「キルヴァーストーン(Kylver Stone)」で、400年頃のものと判明しています。
ルーン文字全体としても非常に古いものですが、今回の調査では、これを数百年も前に遡るルーン石碑が見つかったのです。