アンティーク日時計で時刻を計ってみた
イギリス用に作られたものですし、日本は緯度が異なるので、「本当」の精度を見るには本体を少し傾けて角度を調整するのが正しいです。
もっと細かいことを言うと、日本の標準時は東経135度の地点を基準にしているので、私のいる都内の東経約139度のズレも考慮する必要があります。
しかし面倒くさいし、実用するならどれだけ日時計の時刻とそのときの日本の標準時がどれだけ違うか把握できればいいので気にしないことにしました。
9月25日の10時に時刻を計ってみました。方位磁石を方角に合わせてから、影の位置を見ます。
ノーモンの影の外縁が文字盤の目盛りにかかっているところを読むので、日時計は10時30分を指しています。
なお、1月後と2月後に計ってみたところ、標準時刻との差はだいたい20分から30分ほどでした。
これくらいの時間の差ならば、かなり使える印象です。
この日時計を持って、自身もアンティークの日時計を私物として持っているという高円寺にあるアンティークショップ『RECULIO』の店長にお話をうかがってみました。イギリスの19世紀半ばは、すでに機械式の携帯時計も使われていたそう。
ただ、携帯式の日時計も併用して使われていたとのことです。
当時はまだ機械式の時計の精度が良くなかったのでしょうね。また、携帯式の日時計は、精度よりも晴天のときしか使えないことの方が不便に感じました。
うっすら太陽に雲がかかった程度でも、だいぶ影が薄くなって見えにくいです。
携帯式日時計の変化
この19世紀の携帯式日時計のノーモンは三角形をしています。
しかし、少し前の18世紀の携帯式の日時計は、このようにノーモンが細いひものような造りでした。水平式日時計ではなく、垂直式日時計のようなデザインですね。
大航海時代の16世紀頃の携帯式日時計のレプリカという製品もこれとそっくりだったので、長い間使われてきたデザインなのだと思います。
開閉式の折りたたみ構造で携帯性に優れていますが、何度も開閉するうえに細いノーモンは傷みやすく、アンティークとして市場に出てもノーモンがなくなっていたり、文字盤の印刷が擦り切れて読みにくくなっていたりします。
ノーモンが細い方が文字盤のピンポイントな位置を指すので精度が高く時刻を読み取れそうですが、頑丈性や安定性など合理的な理由のために、三角形のノーモンになっていったのでしょう。
日時計の種類を調べた際、携帯式日時計がひとつのジャンルとして取り上げられているものもあり、そこでは占星術的な用途も兼ねたアクセサリーとしても使える日時計が紹介されていました。
携帯式の日時計は、最初は実用的な意味合いは低かったのかもしれません。
しかし、人が広範囲に移動するようになった大航海時代に時計の重要性が増し、実用性が求められて大きい日時計のミニチュア版が携帯式として使われるようになったのではと推察します。
アンティークの日時計を使ってみて
精巧な造りと、意外と使えるということに驚きました。また、100年以上前の機器が今でも壊れずに存在していて、実際に使用できるのは感動します。また、当時は平民の自分は触れられないお金持ちの所持品だったはず。
道具は実際に使ってこそなので、ときどき持ち出して楽しもうと思います。
この携帯日時計を実際に見ることができます
吉祥寺の『鉱物Bar』の企画「天体嗜好症展」で2月26日(日)まで展示中です。ほかにもコレクションから珍しい天文系のアンティークを貸し出しています。
また、この『鉱物Bar』では2月25日(土)には実際に物に触ってもらいながら解説するトークライブがあるそうです。
興味のある方は足を運ばれてみてはいかがでしょうか?
#天体嗜好症 展Specialな夜
2/25土17時〜博物蒐集家であり星空案内人®︎や科学ライターとしても活動している編集者ofugutan(今井麻裕美)さん @Mayu_I_ofugutan
ゲストに天体アンティークの魅力や歴史など四方山話を愉しみます。鉱物菓子&飲物付き4000円
所要2h希望の方dmかメールを#鉱物Bar pic.twitter.com/WyramkWdvF
— 鉱物Bar by 鉱物アソビ2023年末迄は営業 (@KoubutuAsobi) February 4, 2023