木星に新たな衛星を12個発見!総数92個で土星を抜き単独トップに
木星に新たな衛星を12個発見!総数92個で土星を抜き単独トップに / Credit: Sky and Telescope – ASTRONOMERS FIND A DOZEN MORE MOONS FOR JUPITER(2023)
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木星に新たな衛星を12個発見!総数92個で土星を抜き単独トップに

2023.02.06 Monday

衛星とは惑星のまわりを運行する天体のことで、地球では「月」のみが知られています。

他の太陽系惑星では、天王星が27個、海王星が14個、火星が2個で、水星と金星には存在しません。

その中で断トツの衛星数を誇るのが木星と土星です。

これまでは木星の80個に対し土星が83個でトップでしたが、このほど、米スミソニアン天体物理観測所(SAO)の運営する小惑星センター(MPC)により、木星のまわりで衛星が新たに12個見つかったと発表されました。

これで木星の衛星数は92個になり、土星を抜いて単独首位に躍り出ています。

報告の詳細は、2023年1月31日付でアマチュア天文学の月刊誌『Sky & Telescope』に掲載されました。

Jupiter’s moon count jumps to 92, most in solar system https://phys.org/news/2023-02-jupiter-moon-solar.html Jupiter now has the most moons in the solar system, beating Saturn thanks to 12 newfound satellites https://www.space.com/jupiter-moon-discoveries-total-92 ASTRONOMERS FIND A DOZEN MORE MOONS FOR JUPITER https://skyandtelescope.org/astronomy-news/astronomers-find-a-dozen-more-moons-for-jupiter/

どんな大きさで、どの位置を公転している?

新たに見つかった天体を「衛」と認定するには、その軌道を全周にわたって追跡し、惑星を公転していることを確認する必要があります。

この度、木星の仲間入りを果たした12個の衛星は、米カーネギー研究所(Carnegie Institution)を中心とするチームが2021年と2022年に行った観測で発見されました。

その後の追跡調査で木星周囲での公転軌道が確認され、「木星の衛星」として認定されています。

ただこれらの衛星はどれも直径1〜3キロメートルと非常に小さく、木星からかなり離れた場所に位置していました。

いずれも木星を一周するのに340日以上かかっており、うち9つは550日以上の公転周期を持っていたという。

木星に最も近く、衛星としても有名なガリレオ衛星(イオ・エウロパ・ガニメデ・カリスト)と比べると、その小ささや遠さが分かります。

この中で一番小さなエウロパでも直径3138キロで公転周期は3.55日、最も大きなガニメデでは直径5262キロで公転周期は7.16日です。

ガリレオ衛星(左からイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)
ガリレオ衛星(左からイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト) / Credit: ja.wikipedia

また12個の衛星のうち、3つは木星側に近い順行軌道(木星の自転と同方向)のグループに属していました。

順行の木星衛星としては、この3つを含め21個が知られています。

あとの9つは木星から遠い逆行軌道(木星の自転と逆方向)のグループに属していました。

こちらは木星衛星の大部分を占める71個が知られており、木星の重力がこれらの逆行天体を衛星として取り込めるほど強いことを示しています。

ちなみに、逆行グループの軌道に属していながら順行で公転しているのが、木星の第62衛星バーリトゥード(Valetudo)」です。

逆行グループに属する順行衛星は唯一これのみで、非常な変わり者であることから、ポルトガル語で「何でもあり」を意味する「バーリトゥード(Vale tudo)」と命名されました。

バーリトゥードはブラジル発の”何でもあり格闘技”の名称であり、現在の総合格闘技(MMA)の原型とも言われています。

内側からガリレオ衛星(ピンク)、順行(青)、バーリトゥード(緑)、逆行(赤)
内側からガリレオ衛星(ピンク)、順行(青)、バーリトゥード(緑)、逆行(赤) / Credit: Sky and Telescope – ASTRONOMERS FIND A DOZEN MORE MOONS FOR JUPITER(2023)

一見すると、木星から遠い天体の方が見つかりにくい感じがしますが、研究主任のスコット・シェパード(Scott Sheppard)氏は「木星に近い衛星ほど発見が困難になる」と指摘。

その理由について「木星から放たれる散乱光がとても強いため、木星に近い天体ほど光に隠れて見えづらくなるから」と説明しました。

また同氏は「近いうちに、新たに見つかった衛星の一つをクローズアップして画像化し、その起源を詳しく調べていきたい」と話しています。

木星の衛星軌道を上から見たイメージ
木星の衛星軌道を上から見たイメージ / Credit: Sky and Telescope – ASTRONOMERS FIND A DOZEN MORE MOONS FOR JUPITER(2023)

今回、衛星数でめでたく太陽系内のトップに立った木星ですが、決して安心はできません。

というのも天文学者らによれば、土星の周囲で直径3キロほどの天体がすでに数十個も確認されているからです。

ただ、これらが土星の周囲を公転しているかどうかはまだ分かっていません。

それでも公転軌道が確認されて衛星と認定されれば、一挙に記録更新される可能性もあるとのこと。

しかし、事情は木星でも同じことなので、今後もしばらくは木星と土星の独走状態が続きそうです。

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