どんな大きさで、どの位置を公転している?
新たに見つかった天体を「衛星」と認定するには、その軌道を全周にわたって追跡し、惑星を公転していることを確認する必要があります。
この度、木星の仲間入りを果たした12個の衛星は、米カーネギー研究所(Carnegie Institution)を中心とするチームが2021年と2022年に行った観測で発見されました。
その後の追跡調査で木星周囲での公転軌道が確認され、「木星の衛星」として認定されています。
ただこれらの衛星はどれも直径1〜3キロメートルと非常に小さく、木星からかなり離れた場所に位置していました。
いずれも木星を一周するのに340日以上かかっており、うち9つは550日以上の公転周期を持っていたという。
木星に最も近く、衛星としても有名なガリレオ衛星(イオ・エウロパ・ガニメデ・カリスト)と比べると、その小ささや遠さが分かります。
この中で一番小さなエウロパでも直径3138キロで公転周期は3.55日、最も大きなガニメデでは直径5262キロで公転周期は7.16日です。
また12個の衛星のうち、3つは木星側に近い順行軌道(木星の自転と同方向)のグループに属していました。
順行の木星衛星としては、この3つを含め21個が知られています。
あとの9つは木星から遠い逆行軌道(木星の自転と逆方向)のグループに属していました。
こちらは木星衛星の大部分を占める71個が知られており、木星の重力がこれらの逆行天体を衛星として取り込めるほど強いことを示しています。
ちなみに、逆行グループの軌道に属していながら順行で公転しているのが、木星の第62衛星「バーリトゥード(Valetudo)」です。
逆行グループに属する順行衛星は唯一これのみで、非常な変わり者であることから、ポルトガル語で「何でもあり」を意味する「バーリトゥード(Vale tudo)」と命名されました。
バーリトゥードはブラジル発の”何でもあり格闘技”の名称であり、現在の総合格闘技(MMA)の原型とも言われています。
一見すると、木星から遠い天体の方が見つかりにくい感じがしますが、研究主任のスコット・シェパード(Scott Sheppard)氏は「木星に近い衛星ほど発見が困難になる」と指摘。
その理由について「木星から放たれる散乱光がとても強いため、木星に近い天体ほど光に隠れて見えづらくなるから」と説明しました。
また同氏は「近いうちに、新たに見つかった衛星の一つをクローズアップして画像化し、その起源を詳しく調べていきたい」と話しています。
今回、衛星数でめでたく太陽系内のトップに立った木星ですが、決して安心はできません。
というのも天文学者らによれば、土星の周囲で直径3キロほどの天体がすでに数十個も確認されているからです。
ただ、これらが土星の周囲を公転しているかどうかはまだ分かっていません。
それでも公転軌道が確認されて衛星と認定されれば、一挙に記録更新される可能性もあるとのこと。
しかし、事情は木星でも同じことなので、今後もしばらくは木星と土星の独走状態が続きそうです。