宇宙の体積が2倍になるとブラックホールの質量も2倍になる
なぜエサがないにもかかわらずブラックホールが成長したのか?
謎を解明するため研究者たちが着目したのは、宇宙サイズとブラックホール質量の関係でした。
これまでの研究により、私たちが住む宇宙は時間経過とともに加速度的に膨張していることが示唆されています。
そのため宇宙空間に存在するブラックホールも膨張に連動する形で「ゴムのように伸ばされる」ことになります。
身の回りの例で例えるならば、風船の上に張られた黒いゴムシールが、風船が膨らむのにあわせて大きくなっていく様子と似ているでしょう。
またこのとき、黒いゴムシールには風船を膨らませた力の一部が溜まっていると見なすことができます。
研究者たちは宇宙とブラックホールの関係も似ており、宇宙が膨張すると伸びていくブラックホールにもある種のエネルギーが加わって「質量も」増大すると考えました。
アインシュタインの方程式「E=mc²」ではエネルギーと質量が等価であることが示されており、宇宙の膨張と共にブラックホールに加わった力はブラックホールの質量へと変換されると考えることが可能だからです。
そこで研究では実際に宇宙の膨張速度とブラックホールの成長速度を比べてみることにしました。
すると両者が上手く連動していることが判明したのです。
つまりエサがなくてもブラックホールが成長したのは、宇宙の膨張に引っ張られる形でブラックホールが内部にエネルギーを抱え込んだからだと言えるのです。
研究者の一人は「宇宙の体積が2倍になると、ブラックホールの質量も2倍になる」と述べています。
また研究では宇宙の膨張に対してブラックホールの質量がどれだけ増加するかは「k」と呼ばれる、宇宙とブラックホールの結合強度に依存することが示されています。
空間である宇宙と天体であるブラックホールの「結合強度」というと、なんだか哲学的なイメージを持つかもしれません。
なので再び風船で例えるならば「k(結合強度)」の強さは、表面に張られた黒いゴムシールが風船の膨張にどれだけ連動して(結合して)大きくなるかを表す数値であると言えるでしょう。
(※伸びにくいシールほど伸びたときにより大きなエネルギーを蓄えます)
また観測データから値を割り出したところ、私たちの宇宙では「k(結合強度)」の値がほぼ正の3であることが明かになりました。
なぜ「3」になったのかその根本的な理由は誰にもわかりませんが、宇宙とブラックホールの結合強度kは私たちの宇宙に存在する最も基本的な定数の1つなのかもしれません。
実際にこの報告が事実である場合、宇宙を膨張させている暗黒エネルギーはブラックホールの質量増加という形でブラックホール内部の真空エネルギーと結合していることになります。
これはシンプルに考えれば宇宙を膨張させた力がブラックホール内部に溜まっていくという見ることができるでしょう。
しかし研究者はブラックホール自体が暗黒エネルギーの源である可能性を示唆しています。
その場合、宇宙の膨張がブラックホールを引き伸ばし質量を増加させたのではなく、ブラックホール内部から暗黒エネルギーが発生し、ブラックホールの質量増加と共に宇宙を膨張させているという解釈になります。
ただ今回の研究は非常に先進的なため、結論に対して懐疑的な理論家も多く、他の多くの人々も「興味深い」と述べつつ様子見の姿勢を保っています。
この研究はブラックホールを再定義し、宇宙の理解に革命を起こす理論となるのでしょうか?
超大質量ブラックホールのいくつかが既存の宇宙論では説明できない「重すぎる」質量を持つことは他の研究でも示されている事実です。
しかしその理由の検証には多くの時間がかかるでしょう。