リモートワークで採用されやすいのは仕事に対して「高い能力を持つ人」
1つ目の研究には、304名の一般人(採用経験が無いか浅い)が参加。
彼らは、リモートもしくはオフィスの仕事に就く候補者2人の情報を読み、自分が人事担当者の立場なら、どちらの候補者を採用するか選択しました。
ちなみに候補者の1人は仕事に対して高い能力を持つ一方、社交性に関する情報は不足している人物で、もう1人の候補者はあまり仕事に対する能力は高くないが社交性などは非常に高いと見なせる人物でした。
例えば業務経験があるけれど学生時代に部活動はなにもしていなかったと人と、業務経験はまだないけれど学生時代は運動部で部長をしていた人、のように考えるわかりやすいかもしれません。
その結果、リモート条件では高い能力を持つ候補者が選ばれやすいと判明しました。
しかしオフィス条件では、候補者の選ばれやすさに違いはありませんでした。
ここからは採用経験がない人たちでも、リモートワークではコニュニケーション能力よりも実務能力を重視する傾向が見て取れます。
2つ目の研究には、一般人ではなく、採用担当者として働いてきた298人が参加しました。
彼らには研究チームが準備した求人の説明を読んでもらい、現在の会社や部署で誰かを採用するケースを想定してもらいました。
そして研究1と同じく特性の異なる2タイプの候補者のうち、どちらかを選択してもらいました。
その結果、採用担当者の職場がオフィスである場合、特に能力よりも人柄を重視する傾向があると分かりました。
しかし採用担当者の職場がリモート環境にある場合、彼らは実務能力の高い候補者の方が適切だと感じ、採用する傾向が高くなりました。
採用経験のある担当者たちは、過去の経験から礼儀正しさやコミュニケーション能力の価値を理解しているため、それを採用基準として持っています。
しかし、リモートワーク環境ではそうしたコミュニケーション能力の優先度を落とし、実務能力を重視する傾向が出たのです。
確かにチャットや一時的なビデオ会議だけで完結するリモートワークでは、良好な人間関係や円滑なコミュニケーションから得られるメリットが最小限になります。
評価の基準が、リモートでも明確に判断できる「仕事の質」や「早さ」、「正確性」だけに限定されるのも不思議ではありません。
そのためリモートワークを望んで就職したり転職したりする人は、面接を受ける際、人柄よりも能力に焦点を当ててアピールをすることで、採用される確率が高まることでしょう。
これはコミュニケーションが苦手な人にとって朗報だと言えるかもしれません。
一方、今回の結果は採用担当者である会社側に警告を与えるものとなりました。
「リモートワーク」というレンズを通して見てしまうと、高いコミュニケーション能力や人間関係を促進させるスキルを持っていない人材ばかりが集まる恐れがあるのです。
研究チームは、仮にリモートワークであっても、長期的に見ると組織を発展させてくれる「人柄の優れた人材」も意識的に採用することを勧めています。