「ペレット推進システム」唯一の欠点
ただこの推進システムの難点として、減速の仕組みが存在しないことがあげられます。
1年あたり30天文単位の速度を達成した宇宙船は目的地点に望遠鏡をリリースすることはできても、何らかの減速措置をとらない限り、望遠鏡そのものも1年あたり30天文単位の速度で移動し続けることになります。
たとえ減速できなかったとしても、太陽重力レンズは550~880天文単位の範囲で利用可能であるため、上手くいけば望遠鏡の設置後10年間にわたり観測が可能となりますが、それ以降は事実上、使い捨てとなります。
そのため減速する方法がないまま、今回のプロジェクトを進めると太陽重力レンズを使った観測を持続的に行うために、最低でも10年ごとに望遠鏡を搭載した宇宙船を再出発させる必要が出てきます。
同様の問題はスターライトプロジェクトにも存在しています。
以前にクマムシを乗せた宇宙船をプロキシマケンタウリの惑星に送る計画を紹介しましたが、この計画でも減速手段は考えられておらず、クマムシは光速の30%の速度で惑星に突っ込むことになっています。
指向性エネルギーを用いた宇宙の帆船は実現性の高い方法ではありますが、減速方法がない推進システムはあまり実用性があるとは言えません。
あらかじめ先行させた宇宙船から減速用のビームを後方に射出するなど、減速方法も提案されていますが、何らかの手段で宇宙船を停止させる技術も同時に開発していく必要があるでしょう。