同じ言葉を繰り返すNPCはもう古い!? 人格を備えたNPCとのフリートークが可能になるかも
ゲームのNPCは、その見た目こそ2Dから3Dへと大きく変化してきましたが、中身自体はあまり変わっていません。
あらかじめプログラムされた言葉を繰り返すだけの存在であり、プレイヤーも、NPCとの会話を「ゲームクリアに必要な情報を得るための手段」として扱ってきました。
そして、このようなプレイヤーとNPCとの大きな壁が、ゲームの没入感を阻害してきました。
いくらヘッドセットでハイクオリティなVR体験が可能だったとしても、NPCと会話した瞬間に「これがゲームである」という現実をたたきつけられるのです。
しかし多くの人が推測しているとおり、近年の会話型AIの進化によってゲームのNPCは大きく変化しようとしています。
最近では会話型AIの1つ「ChatGPT」などが有名であり、どんな質問にもなめらかに回答してくれます。
時には、鋭い視点からの説得力のある言葉や、クスっと笑ってしまうような面白い冗談を投げかけてくれることさえあり、まるで本物の人間と会話しているかのような気分になります。
このような会話型AIに以前から目をつけていたInworld AI社は、AIを導入したNPCの開発に取り組んできました。
事前にそのキャラクターに沿った情報を学習させることで、独自の考え方を持つNPCを作成しているのです。
従来の会話型AIと同じく、プレイヤーの質問になんでも対応してくれるので、まるで現実に存在するキャラクターと会話しているかのようです。
例えばInworld AI社が以前に公開したデモムービーでは、それぞれ世界観の異なるゲームのNPCに「ずっと親友でいたいですか?」と尋ねています。
そうすると、脱出トンネルを探している最中のNPCには「そういう話は任務の後でしましょう」とたしなめられます。
また2DのロボットNPCは、「私には友情がプログラムされていませんが、その可能性についてじっくりと議論できるかもしれません」と、真面目な返答が返ってきます。
同じ言葉を投げかけても、キャラクターの性格やその時の状況によって返答が大きく異なるのです。
さらにInworld AI社は、「NPCとのフリートーク」を重視した新しいゲームデモ「オリジンズ(Origins)」を発表しました。
この「オリジンズ」では、人間とロボットが共存する不安定な社会でプレイヤーはある事件の解決に挑みます。
刑事であるプレイヤーは、爆発事件を解決するために、AI導入型のNPC20人以上と自由に会話し、証言を集めるのです。
それぞれのNPCは決まった言葉を繰り返すのではなく、プレイヤーの言葉に基づいてリアルタイムで応答してくれます。
オリジンズを紹介する動画では、プレイヤーがまるで本物の人間と話しているかのようにNPCと会話できています。
このオリジンズは、2023年6月にゲームの祭典「Steam Next フェス」でプレイできるようになります。
今回のInworld AI社の取り組みは、今後のゲーム業界を大きく変化させるに違いありません。
大手のゲーム会社が会話型AIを導入し、「リアルなNPC」を生み出してくれることに期待したいものですね。