ホームランの増加には地球温暖化がいくらか関係している
ホームランの増加には地球温暖化がいくらか関係している / Credit:Canva
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メジャーリーグのホームラン増加に地球温暖化が影響していた!?

2023.04.10 Monday

2023 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での日本優勝や、MVPを獲得した大谷翔平選手の活躍が大きな話題を呼びました。

そんな大谷選手は、投手と打者の二刀流でありながら、数多くのホームランを打つ選手として注目されています。

そして彼が所属しているメジャーリーグベースボール(MLB)では、全体として過去数年間でホームランの数が劇的に増加しています。

MLB全体でホームランが増加してきた理由はいったい何でしょうか?

アメリカ・ダートマス大学(Dartmouth College)気候科学科に所属するクリストファー・W・キャラハン氏ら研究チームは、過去のメジャーリーグの10万試合を分析し、ホームラン増加の原因の1つが地球温暖化にあると発表しました。

研究の詳細は、2023年4月7日付の学術誌『Bulletin of the American Meteorological Society』にて報告されています。

MLB home run counts are rising – and global warming is playing a role https://theconversation.com/mlb-home-run-counts-are-rising-and-global-warming-is-playing-a-role-203226 Climate change adding 50 homers a year in MLB, study says https://abcnews.go.com/US/wireStory/study-climate-change-juicing-homers-98426492
Global warming, home runs, and the future of America’s pastime https://journals.ametsoc.org/view/journals/bams/aop/BAMS-D-22-0235.1/BAMS-D-22-0235.1.xml

MLBではホームランが劇的に増加している

MLBでのホームランは増加している
MLBでのホームランは増加している / Credit:Canva

外野フェンスを越える「ホームラン」は、一気に大量得点が見込める「野球最大の見せ場」と言えます。

一発逆転の可能性を秘めたホームランは、本来「貴重なもの」でした。

ところが近年、メジャーリーグベースボール(MLB)では、ホームランの数が劇的に増加しています。

下記のグラフは、MLBチームの1試合あたりの平均ホームラン数の推移を示しています。

MLBチームの1試合あたりの平均ホームラン数の推移
MLBチームの1試合あたりの平均ホームラン数の推移 / Credit:The Conversation_MLB home run counts are rising – and global warming is playing a role(2023)

このグラフによると約60年でホームラン平均数が0.8本から1.2本にまで増加しているのが分かります。

そして2022年には、ニューヨークヤンキースのアーロン・ジャッジ氏が、記憶破りの年間62本ものホームランを打ちました。

これほどまでにMLBのホームランが増加しているのはなぜでしょうか?

1つにはスポーツ科学の発展があるでしょう。

選手や監督・トレーナーたちは、科学的な根拠に基づいてトレーニングや食事、睡眠を改善してきており、そのことが「ホームランを打ちやすい体と技術」の構築に役立ってきたのです。

しかしそれ以外の要因として近年注目されているのが、「地球温暖化がホームラン増加に関係している」という考えです。

この考えは、単なるこじつけではありません。

物理学的には空気が温かくなればなるほど、空気が膨張するため気体密度は低くなります。

その結果、空気抵抗が小さくなり、打球はより遠くへ飛びやすくなるのです。

世界の気温を「1951年~1980年の平均気温」と比較したグラフ。年々、気温が上昇している
世界の気温を「1951年~1980年の平均気温」と比較したグラフ。年々、気温が上昇している / Credit:The Conversation_MLB home run counts are rising – and global warming is playing a role(2023)

つまり「気温が高いと打球が飛びやすい」というのは物理学上の事実であり、アメリカ海洋大気庁が「6~8月のアメリカの平均気温は過去40年間で2℃以上も上昇している」と述べるように、地球の気温が年々上昇していることも事実です。

これらを考えると、地球温暖化とホームランの増加には関連性が見られるかもしれない、というわけです。

しかし先に述べた通りホームラン数の増加には選手のトレーニングの最適化、球場の設計、試合のシーズン状況、風向き、バットやボールなど道具の改善など、さまざまな要因が考えられます。

こうした要素を排除して気温上昇のみにフォーカスし関連性を証明する科学的な調査は、これまで行われていませんでした。

そこで研究チームは、気象やスタジアムなどの環境要因を考慮しつつ、過去数年間のMLBの10万以上の試合と、22万の打球を分析しました。

この分析には、2015年以降に設置された高速カメラによるデータ分析も含まれています。

例えば、同じ角度・速度の打球データを集め、気温の高い日と低い日の違いを比較しました。

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