「動物のはく製模型」でひっつき虫の散布方法を調査する
「ひっつき虫」とは、動物やヒトに張り付く植物の種子の俗称です。
ひっつきのメカニズムは複数存在し、棘(とげ)や鉤(かぎ)で刺したり引っかけたりするものや、粘液を出して張り付くものがあります。
自ら移動できない植物にとって、ひっつき虫による種子散布は「分布域を広める唯一の機会」だと言えます。
子供の頃、服に張り付いた「ひっつき虫」は、単なるゴミや汚れの付着ではなく、植物たちの高度な生存戦略だったのです。
では自然界において、この生存戦略はどのように機能しているのでしょうか?
これまでの研究では、家畜やシカ類などの一部の動物種に種子が付着しているか確認する程度であり、野生動物による種子の付着散布の実態は国内外でほとんど知られていませんでした。
そこで佐藤氏ら研究チームは、6種の中型哺乳類(アカギツネ、アナグマ、アライグマ、タヌキ、ニホンイタチ、ハクビシン)のはく製模型に車輪を付けて、5つの調査地点(ミュージアムパーク茨城県自然博物館の野外施設にある林の縁)の地面上を移動させました。
そして、それぞれの体表に付着する種子を回収・分析しました。
その際、動物種や季節(植物が生育している10月と枯死した12月)による付着量と付着部位の違いに注目しました。