腸内細菌は知っているけれど腸内ウイルスって何?
人間の腸にはおよそ1000種類、100兆個にも及ぶ腸内細菌が住み着いているおり、人間の体を構成する細胞数60兆個よりも多くなっています。
そのため腸内細菌の影響も甚大であり、これまの研究では腸内細菌の存在が私たちの精神や体の健康に大きな影響をあたえることがわかっています。
たとえば過去に行われた研究では、特定の腸内細菌の比率や種類が、人間やマウスの性格や攻撃性に影響を与え、社会的地位の上下にもかかわっていることが示されています。
また他の研究では、特定の腸内細菌が、がんの免疫治療の効果にも影響していることが示されています。
腸内細菌は私たちの免疫と健康を陰から支配していると言えるでしょう。
しかし、そんな腸内細菌にも天敵がいました。
その天敵とは細菌を専門に感染する「ファージ」と呼ばれるタイプのウイルスです。
ファージウイルスにはさまざまな種類が存在しますが、多くは上の図のようにウイルスの遺伝子を格納する頭部と、細菌細胞の表面に取り付くための尾部から構成されています。
腸内細菌にとって動物の腸が住み心地がいい場所であるならば、狭い空間に獲物(細菌)が詰まっている腸はファージウイルスにとって絶好の狩場となったからです。
結果、私たちの腸内には腸内細菌と同じかそれ以上の数のファージウイルスが住み着くことになります。
ただ腸内ウイルスの研究は腸内細菌よりも遅れていました。
既存の腸内ウイルスの研究も主に成人を対象にされており、赤ちゃんの腸内ウイルスについては多くが謎となっていました。
そこでコペンハーゲン大学の研究者たちは5年間かけて647人の1歳児の赤ちゃんの糞便を採取し、内部に含まれているウイルスの調査を行うことにしました。