「ネコカフェの猫」を呼び寄せる最良の方法を発見!
なんだかんだで猫たちに遠慮して「時間切れまで眺めていただけだった……」ということも多いでしょう。
確かに猫は「見ているだけで幸せ」になれる動物です。
しかしネコカフェは猫と安全にコミュニケーションをとれる場所であり、出迎えてくれる猫たちの多くは人間相手の「経験豊富」なベテランとなっています。
以前に行われた研究でも、猫は優れた社会認知能力を持っており、人間に慣れた猫たちは人間の発するコミュニケーション合図に敏感に反応することが示されています。
たとえば猫は人間の指差しから隠されたエサを探し出したり、人間の視線を追跡して参照すべき情報を得たり、自分に向けられた言葉を認識したり、人間のジェスチャーや呼びかけを理解することができます。
また猫は精神的にも人間を頼りにしており、何か恐ろしいものを目にすると、飼い主の方に視線を向けることが明らかにされました
しかしネコカフェに訪れる人々にとってより重要なのは、どうすれば猫たちと仲良くできるかでしょう。
特に、こちらからの呼びかけや合図に反応してやってきてくれるという状況は、猫好きにとって得難い経験です。
そこで今回、パリ・ナンテール大学の研究者たちは人間に慣れているネコカフェの猫を対象にして
①視覚的合図のみ
②音声的合図のみ
③視覚と音声の両方
④何もしない
という4通りの方法でコミュニケーションを図ったとき、どの方法が最も猫たちの呼び寄せを素早くできるかを調べることにしました。
一見すると、ネコカフェの猫たちと遊んだついでに行ったような実験で、結果も経験的に予測できるように思えます。
しかし①~④がどんな順序で有効であるかを、統計的に確かめた人はいません。
なお実験では上の図のように人間と猫が配置して①~④の方法が実行され、猫がやってくるのにかかった時間(近接遅延時間)が測定されました。
結果、最も素早く猫を呼び寄せられたのは③の視覚と音声の両方を用いたものであり、2番目は視覚的合図のみ、3番目は音声的合図のみ、そして最後は④の何もしない場合でした。
この結果から、ネコカフェの猫たちにとって視覚的コミュニケーションのほうが音声的コミュニケーションより魅力が高いことを示します。
同様の結果は犬でも確認されており、犬たちも人間のジェスチャーなど視覚的合図は言葉よりも信頼できる合図とみなしているようです。
また犬では視覚的な合図のほうが言葉での合図よりも反応が速いこともしられています。
人間は言葉の意味を用いてコミュニケーションを取る生き物なので、音声を頼りにする傾向が強いですが、動物たちにとって相手の意図を汲み取りやすいのは、音声よりも視覚的なジェスチャーなのだと考えられます。
ネコカフェの猫たちは人間に慣れており、なるべく人間の意図に合わせて行動しようとしてくれるようです。
そのため、ジェスチャーでそばに来て欲しい気持ちを伝えた場合、もっとも反応してくれるのでしょう。
これはネコカフェに遊びに行くことが多い人は心得ておいた方が良い情報でしょう。
そして、猫好きにとってより興味深いのが、猫のしっぽから読み取られたネコカフェの猫の気持ちに関する報告です。
今回の研究では①~④を実行した時の猫のしっぽの振られる数も測定されました。
犬のしっぽ振りは主に犬が喜んでいるときにみられますが、猫の場合は逆で、いら立っているときにしっぽを振ります。
ではネコカフェの猫たちは、どんなときにいら立ちを感じるのでしょうか?
猫のしっぽ振りを測定したところ、最も多く振られたのが意外にも④の「何もしない」ケースでした。
次いで音声的合図、視覚的合図と続き、最もいら立ちを感じていなかったのは「視覚と音声の両方を使うコミュニケーション」を行ったときでした。
研究者たちは、人間が「何もしない」場合に対して、猫たちがもっともイラついていた原因について「人間と同じように、猫も同じ部屋にいる他人の意図を読み取れないことに不快感を感じている」と述べています。
猫は気ままで1人を好む生き物なので、構うと嫌がると思っている人は多いかもしれません。
そのためネコカフェの猫について「嫌々人間の相手をさせられているのでは?」と心配している人も多いでしょう。
なのでネコカフェ初心者はしばしば猫たちに遠慮して部屋に入っても固まって何もしない場合があるかもしれません。
しかし、どうやら人間に慣れたネコカフェの猫たちは、構ってもらえない方が不安でイライラしてしまうようです。
もし今後ネコカフェに行く機会があったら、猫たちを不安がらせないよう、ジェスチャーと声を組合わせて自分の気持ちを猫たちに伝えるコミュニケーションを心がけるといいかもしれません。
研究者たちは今後も人間と猫のコミュニケーションについて深く掘り下げた研究をしていきたいと話しています。