幼い子供の4割はトロッコ問題で「人間より動物の命を優先する」と判明
幼い子供の4割はトロッコ問題で「人間より動物の命を優先する」と判明 / Credit:Mariola Paruzel-Czachura et al . Children Value Animals More than Adults do — a Conceptual Replication and Extension . PsyarXiv (2023)
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幼い子供の4割はトロッコ問題で「人間より動物の命を優先する」 (2/2)

2023.05.15 00:00:00 Monday

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10歳を境に人間への関心が高まる

人の命の重さに特別な意味をもたせるのは10歳以降
人の命の重さに特別な意味をもたせるのは10歳以降 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

なぜ子供たちは人命をあまり重視していないのか?

その答えは子供たちの年齢に隠れていました。

2018年に行われた子供たちの関心度を調査する研究では、4歳の子供では・イルカなど身近な動物のほうが警察官や病人などより高い関心を惹き付けましたが、10歳になると逆転を起こし、動物より人間のほうにより高い関心を示しました。

幼い子供の関心は動物と人間に平等に向けられるが10歳を境に人間に強い興味が向けられるようになる
幼い子供の関心は動物と人間に平等に向けられるが10歳を境に人間に強い興味が向けられるようになる / Credit:Karri Neldner et al . The developmental origins of moral concern: An examination of moral boundary decision making throughout childhood . PLOS ONE (2023)

この研究ではさまざまな対象の絵が描かれたカードを配置する過程が含まれており、子供にとって手前側のほうが関心が高い存在となっています。

幼い子供の場合、上の図のように手前側には動物がおおくみられますが、年齢が上がって大人社会に関わる頻度が増えていくと、病人や障がい者など社会的な弱者や警察官など弱者を守る存在を手前側に置くようになりました。

このことから年齢が増えるにつれて子供たちは関心が動物と人間が等しく混ざった状態から、人間中心に変化していくことを示します。

また2020年に行われた研究では、人間の命のほうが動物の命よりも重要であるとする概念が、発達の後期段階(10歳以降)に現れる可能性が示されています。

そのため研究者たちは、人間への興味の高まりが、人間の命を重視する結果に結びついている可能性があると述べています。

年長の子供たちにくらべて年少のこどもたちは動物のおもちゃを好む
年長の子供たちにくらべて年少のこどもたちは動物のおもちゃを好む / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

加えて、研究者たちは子供たちに行われる教育も原因の一つになり得ると述べています。

子供たちは親や教師からヒトには「やさしくしなさい」と教わりますが、幼い子供たちにとってにヒトとは人間と動物の両方を含めたものである可能性があります。

子供向けのテレビ番組で擬人化した動物キャラが多くみられるのも、大人に比べて子供たちの動物に対する親しみが、人間に匹敵するほど強いからだと言えるでしょう。

そのためトロッコ問題においても幼い子供たちは人間に偏った選択が行われません。

しかし成長にともなって認知機能が大きく伸び、人間への関心が高まると、危険な状態にある人や困っている人に対して、大人と同じような人間優先の判断ができるようになると考えられます。

また今回の研究ではポーランド人とアメリカ人の比較も行われており、ポーランドの子供もアメリカの子供も、大人より動物に対する優先度が高いことが示されました。

さらにトロッコ問題の代りに「人間と動物のどちらにご褒美をあげるか?」といった問題でも、幼い子供たちは大人に比べ、動物に対する優先度が高くなっていました。

研究者たちは今後、他の文化圏の子供たちの傾向を調査し、この傾向が人類全体にみられるものなのかを確かめていく、とのことです。

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幼い子供の4割はトロッコ問題で「人間より動物の命を優先する」 (2/2)のコメント

ゲスト

社会的な要求にこたえる必要がない分、子供は素直に答えてしまうのでしょうね。

ゲスト

大人でも本音を言えば見ず知らずの人間より可愛い動物を助けたい人が多そう。
匿名性の高いネット上では人間より動物を選ぶ意見が多くなりそうな気がする。
子供はそういう社会の顔色を伺う必要がないから本音で生きられるんでしょう。

シンノスケ

愛犬を殺された大人のジョン・ウィックは,何十人もの人間を殺しているが,非難するひとは少ない。
このトロッコ問題に対しても,知り合いの老人は「勿論,犬を助ける」という見解だったので,日本の子供たちだけではなく,老人の意見もぜひ確かめ欲しい。

    ゲスト

    突然のジョン・ウィック(笑)
    キアヌのファンなのですか。

    ゲスト

    待ってくれ
    ジョン・ウィックの愛犬は「愛する妻の忘れ形見にして最後のプレゼント」という付加価値が強すぎるぞ
    この実験のケースに当て嵌めるのはどうかと思う

ゲスト

設問の意図がちゃんと伝わってなさそうな気もするなぁ
小さな子に、電車が跳ねることの意味やレゴの人形=人間ってことがちゃんと伝わっているかどうか怪しい
この絵では、動物の方が精巧なので、失いたくないのは動物の人形の方かもしれない
ボーリングの玩具みたいに見るなら、たくさん跳ねた方が楽しいかもしれない

小1の道徳のテストで、先生が正直にやれみたいなことを言ったので懺悔会みたいに回答したらクラス最低点(60点台)になって「お子さんは道徳観に問題があります」みたいな手紙が来たのを思い出した
全部の設問でそりゃ正しい答えを知ってたけどさ
「車の来ていない道でも手を上げて渡る」みたいな設問がたくさんあって、一人満点を取ったのは、いつも車が来てても走って横切るような嘘つきの子だったのが、子供心に何か腑に落ちなかった
今でも覚えてるのは、ちょっと悔しかったんだろうな
今の自分は嘘つきの大人の方なので、人を助けると答えつつも、実際にどっちを助けるかってのはケース次第だろうな

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