食べ物の画像を繰り返し見るだけで食欲が低下
そこで研究チームは、同じ食べ物の画像を繰り返し見ることが食欲にどう影響するかを実験。
オンライン上で延べ1149名の参加者を募り、最初にオレンジ色のM&M’sのマーブルチョコの画像を見せました。
参加者は、同じ画像を3回見るか、30回見るかのいずれかにランダムに振り分けられています。
その後、参加者には「マーブルチョコを何個食べたいか」を1〜10個の間で答えてもらいました。
すると、マーブルチョコの画像を30回見た参加者は、3回見た参加者に比べて、食べたいと希望するチョコの数が少なくなっていたのです。
チームはこの次に、画像中のマーブルチョコの「色」を変えて同じ実験を繰り返した後、先と同じオレンジ色のマーブルチョコを何個食べたいかを質問しました(下の画像の2)。
しかし結果は同じで、30回見た人は3回見た人に比べ、食べたいと希望したチョコの数が少なくなっています。
さらに今度は、マーブルチョコをSkittles(キャンディー)に変えてみました。見た目はマーブルチョコと似ていますが、Skittlesは色によって「味」が変わります(画像の3)。
それでもやはりSkittlesを30回見た人ほど、食べたいと思うキャンディーの数が少なくなっていたのです。
以上の結果からアンダーソン氏は「同じ食べ物の画像を繰り返し見るだけで、ある程度の食欲の満足感を得るには十分である」と結論しました。
またこの結果から、少しの色と味の違いであれば、別の食べ物の写真を使っても効果が期待できると指摘しています。
ただし、今回の結果から主張されているのは同じ種類の食べ物をたくさん見ることであり、見た目も味もガラリと変わる食品の画像(例えば寿司とラーメン)でも、たくさん見れば食欲が落ちる効果があるかはまだ明らかになっていません。
食欲を抑える方法として使える
アンダーソン氏は「この方法は食欲をコントロールする手段として活用できるでしょう」と話します。
「例えば、ある広告を見てピザが食べたくなったとしましょう。
そのときにスマホでピザの画像を検索して、同じ写真を何度も繰り返し見るのです。
そうすることで満足感が得られ、ピザの欲求を抑えられるかもしれません」
1975年以降、世界中の肥満者の数はそれ以前の3倍にまで増加しました。
世界保健機関(WHO)によると、肥満は現代人が直面する最大の健康問題となっています。
そして肥満が増えてしまう理由は、座りすぎや運動不足に加えて、世の中に満ち溢れる食品広告の多さも大きな要因の一つです。
今では、SNSを開けばジャンクフードの宣伝広告が流れ、郵便ポストにはデリバリーのチラシが待ち受けており、近くをドライブするだけでグルメな看板が絶え間なく目に飛び込んできます。
夜中に飯テロ画像を見てしまい、食欲が抑えきれずについついコンビニに高カロリーな食べ物を買いに行ってしまったなんて人もいるかもしれません。
こんな調子では食欲を抑える方が難しいでしょう。
しかし、今回の研究結果を踏まえるなら、そんなときこそ目を背けずに何度も食べ物の画像を見続ければ、次第に食欲をコントロールできるようになるかもしれません。