夢の核融合燃料の実証に成功!
核融合炉の壁面には多くのプラズマを保持する金属、熱を輸送する配管パーツがたくさん取り付けられている為、核融合炉の壁が放射能化してしまうと、炉のメンテナンスが困難になってしまいます。核融合反応とは言えど、放射能汚染の脅威に晒されます。
そこで、期待されているのが、核融合反応の生成物に放射能を持つ中性子が存在しない燃料、よりクリーンな核融合反応が可能であると期待されている「先進的核融合燃料」です。
今回、核融合科学研究所と(米)TAE Technologies社の研究グループはこの「先進的核融合燃料」である「軽水素とホウ素11」の核融合反応の実証に世界で初めて成功しました。
軽水素とホウ素11の核融合反応(p-11B反応)には核融合燃料の第1候補である重水素と三重水素(D-T反応)よりも極めて高い温度のプラズマが必要で実現が難しい反応と考えられています。
核融合科学研究所と(米)TAE Technologies社の研究グループはプラズマをより加熱するために、大型ヘリカル装置(LHD)を用いて、時速1500万kmを超える速さの軽水素をプラズマに入射する装置を独自に開発してきました。
また、高温プラズマを制御するために、プラズマにホウ素の粉末を振りかける装置を設置しました。
加えて、反応の実証に必要なヘリウムの検出にはTAE Technologies社が製作した検出器を用いることで達成し、小川准教授らによるヘリウムの軌道の数値シミュレーションで予測された通りの高エネルギーヘリウムの検出に成功したことで、「軽水素とホウ素11」の核融合反応が実証されました。
今回の成果によって、放射線リスクの極端に小さい非常にクリーンな核融合炉の研究がその一歩を踏み出したことになります。
さらに、実は軽水素とホウ素11の核融合反応のすごさはこれだけではありません。
核融合燃料の第1候補である重水素と三重水素(D-T反応)が最終的には蒸気タービンによる発電を計画しているのに対して、軽水素とホウ素11の核融合反応(p-11B反応)で生成される高エネルギーヘリウムイオンはα線であり、電荷を帯びています。
この荷電粒子を用いて直接電気エネルギーを取り出すことが可能です。
熱エネルギーへ変換し蒸気タービンを回す工程が必要なくなるので、電気へ変換する効率が格段に良くなることも期待されています。
核融合で電気を取り出せると言っても、結局、火力発電や原子力発電のように生成したエネルギーを用いて一度お湯を沸かして、その蒸気でタービン(モータ)を回して電気を得ているので、エネルギーのロスが大きく、残念ながら「SF感」も薄れてしまいます。
蒸気タービンに頼らなくても良いとは、まさにエネルギー革命!
時代が大きく変わる瞬間が訪れるかもしれません。