骨伝導ヘッドホンのデメリット
私たちは主に2つの音を聞き取れます。
1つは、空気の振動が鼓膜に伝わる「気導音」であり、もう1つは、頭蓋骨の振動が直接聴覚神経に伝わる「骨導音」です。
私たちが普段外から聞いている音は気導音ですが、自分の声は気導音と骨導音の両方を聞いています。
自分の声の録音を聞くと違和感を覚えるのは、普段とは異なり気導音だけで自分の声を聞くからです。
ちなみに耳を塞いで声を発するなら、骨導音だけで自分の声を聞くことができます。
そしてこの骨導音を利用したヘッドホンが、一般に「骨伝導ヘッドホン」と呼ばれています。
骨伝導ヘッドホンは主に2つの振動によって、音を伝えています。
1つは側頭部の骨や軟組織が振動する「側頭部振動(RT)」です。
もう1つは、頭部の振動が外耳道内に空気振動として漏れ出る「外耳道内放射音(EC)」です。
いずれも耳を塞がずに音を聞けるため、従来の耳を塞ぐタイプのイヤホンやヘッドホンにはないメリットをもたらします。
例えば、野外でジョギングする際には周囲の音を聞くことで事故リスクを低減できます。
また耳や耳穴を圧迫しないので長時間使用しても疲れにくいというメリットもあります。
しかしながら、骨伝導ヘッドホンには「音声了解度(単語や文章がどれだけ正確に伝わるかを示す値)が低い」というデメリットもあります。
静かな環境では特に気にならないかもしれませんが、電車内や交通量の多い場所、風が強い日などの騒音環境では、音声了解度が著しく低下してしまうのです。
実際に「うるさい場所ではよく聞こえない」と感じている人も多いようです。
この時、一時的に耳を塞ぐなら音声了解度が向上しますが、これでは骨伝導ヘッドホンのメリットを打ち消してしまいます。
そのため、騒音環境でもよく聞こえる骨伝導ヘッドホンの開発が求められてきました。