なぜ宇宙空間で「鉛筆」を使わなかったのか?
実は、有人飛行に成功した当初、NASAと旧ソ連の宇宙飛行士たちはともに船内で鉛筆を使っていたといいます。
ところがすぐに問題が浮き彫りになりました。
鉛筆を削るときに発生する黒鉛や木くず、あるいは字を書いている最中に折れてしまった芯が船内に浮遊してしまったのです。
これは極めてデリケートな機械を搭載している宇宙船にとって好ましくありません。
例えば、導電性の高い黒鉛が機械の隙間に入り込むと故障の原因となりますし、乾燥して燃えやすい木くずは船内での火災を引き起こしかねません。
それゆえに鉛筆を使うのは断念せざるを得なかったのです。
そこでボールペンに取って代わられたわけですが、ここにも問題がありました。
地球の重力下ならインクがちゃんとペン先へ落ちていくのですが、宇宙の微小重力下ではインクが浮いて出にくくなったのです。
皆さんも安物のボールペンを買って、書いても書いてもインクが出ない経験があるでしょう。
あれと同じようなことが起こったと思われます。
ここでNASAは宇宙空間でも安定して使えるボールペンの開発に着手しますが、研究と開発にかかるコストが高騰したため、プロジェクトを早々に中止しました。
「人類は宇宙で字が書けないのか」と追い込まれた矢先、救世主が現れます。
アメリカのペン製造業者であるポール・C・フィッシャー(Paul C. Fisher)が1965年に同僚たちと協力して、宇宙空間でも安全かつ安定して使えるボールペン「フィッシャー・スペースペン(Fisher Space Pen )」を独自に開発したのです。
それはどんな仕組みになっていたのでしょうか?