老化細胞が発毛促進に関与していた
最近発表された研究により、皮膚母斑(別名「ほくろ」)に存在する「オステオポンチン」と「CD44」という2つの分子が、ほくろに生える長くて太い毛の成長を促進させる原因であることが明らかになりました。
「ほくろ」は、色素細胞(メラノサイト)が、 皮膚の一部に集まって形成される母斑の一種です。
ただし「ほくろ」と一言で言っても、その種類は様々で、中には老化色素細胞(老化メラノサイト)が多く存在し、「長くて太い」毛がフサッと生えるものもあります。
論文の筆頭著者であるワン博士はこの「長くて太い毛を生やすのが上手いほくろ」に、以前から魅了され続けていたそうです。
「人の体にできる「ほくろ」で、毛が成長しやすいという不思議な現象に興味がありました。
そこで私たちは、なぜ「ほくろ」に毛が生えやすいのか、そしてその現象をどの遺伝子がコントロールしているのかを調べることにしたのです」とワン博士は語っています。
研究チームはまず、人間の肌にほくろをつくるのと同じ遺伝子変異を持つマウスモデルを作りました。そして、通常の皮膚と「毛深いほくろ」を比較し、「毛深いほくろ」は発毛サイクルが短いことを発見しました。
通常の皮膚と「毛深いほくろ」との主な違いは、老化した色素細胞の数でした。そこで研究者らは、老化した細胞が毛の成長を促進する分子を放出している可能性があると考え、マウスとヒトのほくろの皮膚サンプルを用いて、これらの細胞がどのように機能するのかを調査しました。
結果、老化した色素細胞は、オステオポンチンと呼ばれるシグナル伝達分子を大量に生成し、周りにある毛幹細胞にははこれに反応するCD44という受容体分子を持っていることが判明しました。
オステオポンチンとCD44が分子レベルで相互作用すると、毛幹細胞が活性化され、毛髪がしっかりと成長することがわかったのです。
このプロセスを確認するため、オステオポンチンとCD44を取り除いたマウスモデルを作製したところ、ほくろの毛の成長が著しく遅くなったことも確認されました。
オステオポンチンは、傷の治癒、組織の再生、骨の強化など、体の他の部分でも重要な役割を果たしていることが以前から知られていました。
しかし、これが毛の成長に関与していることが示されたのは、今回が初めてです。