季節や日照量が卵子の性能に影響し出産成功率を変化させると判明!
北半球においては一般に、最も妊娠する人が増えるのは秋で、逆に春には最も低くなることが知られています。
またこの秋に妊娠しやすく春に妊娠しにくいという傾向は、緯度が低い(赤道に近い)地域で強くなると言われています。
このように人間の妊娠しやすさには、明らかに季節的要因が存在しており、赤ちゃんの誕生日に偏りを産む要因になっています。
しかし既存の不妊治療において「成功しやすい季節」というものは存在しないことになっています。
不妊治療における成功のしやすさは季節的に変動する妊娠件数とは別で、試行回数に対して赤ちゃんが産まれた割合である「出生率」が問題となるからです。
そして出生率に対して季節の変化が影響を及ぼすとは思われていませんでした。
実際、幾つかの研究で不妊治療に成功しやすい季節が調べられましたが、季節と関連するという明白な証拠は得られていません。
しかし既存の不妊治療と季節の関係は主に、受精卵が子宮に移されるタイミングばかりが調べられており、卵子の採取時期についてはほとんど調べられていませんでした。
不妊治療において採取された卵子は凍結保存され、体外受精が行われるまで長期に渡って保存されます。
そのため卵子の採取する時期が出生率にかかわるとは、控えめに言ってもあり得なさそうな話と考えられていました。
しかし実際に調べて関係ないとわかった状態と、調べていないけど関係ないだろうと思っている状態では、大きな差があります。
そこで今回、オーストラリアのクリニックの研究者たちは体外受精において卵子の採取された日の条件、とくに緯度によって大きな影響を受ける日照時間が、出生率にどのように影響するかを調べることにしました。
調査においてはまず、2013年から2021年までの8年間に渡って、不妊治療を提供している単一のクリニックで行われた3,657件の凍結胚移植の結果が用意されました。
そして卵子が採取された条件を日照量が少ない日(日照時間0~7.6時間)、日照量が中程度の日(7.7~10.6時間)、日照量が多い日(10.7~13.3時間)の3グループに分類し、出生率と比較しました。
すると日照時間が最も長い日に採取された卵子100個からは30人の生きた赤ちゃんが産まれ、日照時間が最も短い日に採取された卵子100個からは26人の生きた赤ちゃんがうまれており、日照時間の増加により成功率大幅に増加していました。
特に日照時間が最短の日と最長の日を比べた場合には、成功率は30.4%も増加していました。
また受精卵を子宮に移植する当日の季節やその他の状態を考慮したとしても、この傾向は変わりませんでした。
(※受精卵が人間の子宮に移植されるタイミングではなく、初めに卵子が収穫されるタイミングが重要であるということです)
さらに季節ごとにわけると、日照時間が多い夏に採取された卵子100個からは31人の赤ちゃんが産まれますが、秋に採取された卵子100個からは26人の赤ちゃんしかうまれてきませんでした。
冬と春に収穫された卵子の成功率は、これら二つのパーセントの中間に位置していました。従来の体外受精の研究は季節が胚移植、着床、妊娠、出生率には影響しないと示してきましたが、卵子の採取時期に関しては事情が異なるようです。
研究者たちは「卵子の採取時期が不妊治療の成功において受精卵の移植の条件同様に、またはそれ以上に重要であることがわかった」と述べています。
一方、今回の研究では卵子採取時の気温はあまり目立った変化はありませんでした。
ただ最も暑い日(平均気温 14.5 ~ 27.8 ℃)に胚を移植した場合、最も寒い日(0.1 ~ 9.8 ℃)に比べて生児出生率が 18% 減少し、途中で流産してしまう確率は5.5%から7.6%に増加していました。
最も暑い日に受精卵移植が行われたときの流産率の増加は、夏に流産率が高いとする疫学的な統計データと一致しています。
しかし日照量の多い夏に卵子を採取すると、なぜ赤ちゃんが産まれてきやすいのでしょうか?