レペノマムスの「勝利の瞬間」が化石化したもの
時間を白亜紀まで戻して、この化石を分かりやすく復元してみるとこうなります。
チームが化石を詳しく分析してみると、うつ伏せになったプシッタコサウルスの上にレペノマムスが乗っかり、左前脚でプシッタコサウルスのクチバシを、左後脚でプシッタコサウルスの脛をつかみ、そして鋭い牙で肩当たりにガッチリ噛み付いていることが分かりました。
研究主任のジョーダン・マロン(Jordan Mallon)氏は「これは明らかにレペノマムスによる積極的な攻撃が行われていたことを示している」と話します。
当初は死骸を漁っているだけの可能性も考えられましたが、その場合なら普通、死骸の骨により多くの噛み傷がついたり、骨格がバラバラにされるはずだという。
加えて、レペノマムスが全身を駆使して相手をロックする必要もありませんし、2体がここまで絡み合うこともないといいます。
よって、この化石は両者が争った末にレペノマムスがマウントを取り、プシッタコサウルスを仕留めにかかっていた最中であると結論されました。
ただ残念ながら、勝利のごちそうにありつく暇もなく、火砕流に飲み込まれて両者ノックアウトとなったようです。
実はこれまでの研究で、レペノマムスがプシッタコサウルスの赤ちゃんを捕食した事実は知られていました。
しかし、自分の倍もある大人のプシッタコサウルスを捕食しようとした化石証拠は初めてだといいます。
これは恐竜全盛の時代に、哺乳類が恐竜の脅威となり得たことを示す貴重な証拠です。
しかし今のところ、レペノマムスによるジャイアントキリングの化石証拠はこれしか見つかっておらず、当時の世界でありふれた出来事だったのかどうかは分かりません。
このレペノマムスだけが例外的に恐竜ハントの名手だった可能性もあります。
それでも現代にはグズリやラーテルのように、自分より大きなシカやハイエナを積極的に攻撃する哺乳類がいます。
レペノマムスはそうした大物を狙った捕食行動を取る哺乳類の先駆者だったのかもしれません。