「イヌの外貌」と「表情の豊かさ」は無関係と考えられていた
サルやチンパンジーなどの霊長類は、顔の色や模様、そして表情を通じて、社会的なコミュニケーションを豊かにしています。
霊長類における顔の色や模様は、進化の過程で形成されたと考えられています。2004年ワシントン大学で行われた調査等によれば、霊長類の中で高度に社交的な種は顔の色が多様になるように進化し、一方であまり社交的でない種は色彩が少ない顔を持つ傾向があります。
一方、表情が多様さも、進化の結果です。霊長類のうち「地味顔の種」は、豊かな表情をもつようになった可能性があります。
このような背景から、霊長類は、社交性の高いものほど「複雑な模様の顔」になり、一方の「地味顔の種」は、表情を主要なコミュニケーションツールとして進化させてきたと考えられています。
しかし、イヌの場合は少し異なります。イヌは、私たち人間が「人類の最良の友」とするべく、選択交配されてきた歴史があります。
色や模様はもちろん、それ以上に「人間と良好なコミュニケーションをとれる攻撃的でない性質」が優先されて選択されてきました。
その経緯を考えれば、イヌは外見に関係なく、同じように表情の種類を持っているはずです。
このため、研究者たちは「イヌの場合、外貌と表情の豊かさは関係ない」との仮説を立てました。しかし結果はお伝えしたとおり、「イヌも地味顔だと表情豊か」となったのです。
では、なぜ「地味顔のイヌ」は多様な表情を持つに至ったのでしょうか?