カイパーベルトに未発見の惑星があるという仮説
水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星。
現在、太陽系はこの8つの惑星によって構成されており、海王星より外側の軌道には、冥王星やケレスなどの準惑星を含む「カイパーベルト」と呼ばれる氷や岩でできた小天体が無数に集まる領域が存在しています。
この太陽系外縁部のカイパーベルトに存在する天体は独特の軌道を持つことが知られており、それは太陽系の惑星が形成されていく中で、それらの重力的な影響を複雑に受けて形成されたと考えられています。
しかし、ここに問題があります。
太陽から約75億km以上も離れた「遠方カイパーベルト天体」の軌道は、現在の主流な太陽系形成モデル(既知の4つの巨大惑星、木星、土星、天王星、海王星の影響)では、上手く説明できないのです。
特に以下の4つの遠方カイパーベルト天体グループの独特の軌道は、太陽系に海王星より外側の軌道を回る9つ目の未発見の惑星から継続的に重力の影響を受けたと考えないと説明できません。
- 海王星と古くから安定して公転している天体のグループ
- 海王星から遠く離れた天体のグループ
- 45度以上の非常に高い軌道傾斜角を持つ天体のグループ
- セドナ(小惑星)のような非常に特異な軌道を持つ天体のグループ
そこで今回の研究グループは、45億年前の初期太陽系に既知の4つの巨大惑星に加えて、海王星より外側にどのような惑星が存在すれば、現在の太陽系の状況(特にカイパーベルト天体の特性)を再現できるか検証するシミュレーションを行ったのです。
そしてそのシミュレーション結果、下記の条件を満たす惑星が存在すると、遠方カイパーベルト天体の軌道をうまく再現できることがわかったのです。
- 200AU(※)より遠くに位置する
- 太陽から約200-500AU(または200-800AU)の距離で、離心軌道(楕円の軌道)を持つ
- 質量が地球の1.5倍〜3倍で軌道が30度傾いている
(※天文単位:1AU=約1億5000万キロで、地球・太陽間の距離に相当)
つまり、地球より1.5倍から3倍重く、そして太陽から300億km-1200億kmの範囲(太陽からの距離に幅があるのは中心点がズレた楕円軌道のため、上図を参照)に位置し、30度の傾斜を持つ惑星があれば、これまでの解決できなかった遠方カイパーベルトの天体の特性を説明できることがわかったのです。
これらの結果は、遠方カイパーベルトにある天体の分布も説明でき、観測結果と矛盾しないこともわかりました。
この事実は太陽系外縁部に未発見の惑星が存在する可能性を強く示唆しており、それを発見するための手がかりを提供しています。
プラネット・ナイン
以前から、太陽系外縁部には「プラネット・ナイン」と呼ばれる、未知の大型の天体の存在が提唱されていました。
プラネット・ナインもまた、カイパーベルトの天体の複雑な軌道が、既知の太陽系の惑星との相互作用だけでは説明できないことから提唱されている理論です。
原始星系において惑星の存在が、星系に複雑な軌道を生むことは、地球から遠く離れた星の観測からも明らかになっています。
今回の研究で、未発見の惑星が存在する可能性が高まり、またその惑星が持つべき特性の詳細が初めて明らかとなりました。
近い将来、太陽系の惑星が再び9つになる日が来るのかもしれません。