電話やZoomも対面より依頼の成功率が劣る
では、メール以外の電話やZoomでの依頼の成功率がは対面と比べてどうなのでしょうか。
マフディ氏ら研究チームは、電話やビデオ通話、音声メッセージなどさまざまなコミュニケーションツールでの依頼の成功率を調べています。
実験では、大学生888名を5つのグループに分け(対面 vs ビデオ通話 vs 電話 vs ビデオメッセージ vs 音声メッセージ)、友人5人に短い文章の校正をお願いしてもらいました。
ビデオメッセージと音声メッセージは事前に録画・録音した映像と音声を相手に送ってもらっています。
参加者には事前に依頼を行う5人のうち何人が承諾してくれるのかを予測し、実際の成功率との違いを比較しました。
実験の結果、対面以外の他のコミュニケーションツールの依頼の成功率を過大評価する傾向がありました。
対面の依頼の予測と実際の成功率には違いがなかったのにもかかわらず、他のコミュニケーション・ツールの実際の依頼の成功率は予測の半分程度になりました。
この結果は、テキスト以外の映像や音声などのよりリッチな情報を持つコミュニケーションツールであっても、対面時の説得率には及ばないことを意味しています。
電話やビデオメッセージなどの説得は、依頼者の表情や深刻さなど依頼内容以上の情報を相手に伝達するでしょう。
しかしそれらの情報は対面でなければ、依頼の成功率に寄与しないようです。
相手に頼みごとをするときは、頼みやすさより断りづらさを意識する
なぜ私たちは対面での説得を過小評価し、メールや電話など他のコミュニケーション・ツールでの説得率を過大評価してしまう傾向があるのでしょうか。
研究チームは「依頼をする人は、対面時に頼みごとをされる人が依頼を断りずらいことを認識はしている。しかしその認識を自分が他人に説得をするときの結果の予測時に用いていないのではないか」と述べています。
たしかに電子メールは相手への依頼を行ううえで、対面と比べ、相手との物理的距離や時間的なずれを考慮することなく、使用することができます。
しかし誰かからの頼みごとが自分にメールで来た状況を想像してください。
多くの人はメールで頼み事をされると、「これは本当に重要な事案か?なぜ直接尋ねてこないか」と思い、後回しにしてしまうのではないでしょうか。
研究チームは「電子メールは便利で楽なことが多いが、その有用性を過大評価すると、欠点を認識することなく、説得力が大きく劣った手段を選ぶことになりかねない」と警鐘を鳴らしています。
誰かにお願いをする時には、自分の頼みやすさに焦点を当てるのではなく、相手の断りにくさに重きを置くと良いかもしれません。