文字板に書かれていた内容とは?
この文字板で筆記練習をしていた生徒については、古代エジプトのテキスト解釈を専門として故ウィリアム・ヘイズ (William Hayes)氏により解読されています。
氏によると、生徒の名前は「イニス(Iny-su)」という若者で、ここでは自分の兄である「ペイニス(Peh-ny-su)」を仮想の宛名として使い、裕福な権力者になりきって手紙の内容を書いているという。
ヘイズ氏いわく、イニスは非常に堅苦しく、丁重な言葉使いをしており、神聖な樹皮の運搬に関する船荷について書いていたといいます。

このように丁重な言葉使いで手紙を書く技術は、産業分野や国の書記官にとって必須のスキルでした。
また赤ペン先生の方も、生徒を一人前の書記官に育てるために厳しい添削をしていたのでしょう。
しかし、これほど大昔から先生によるチェックに「赤いインク」が使われていたことは非常に興味深い点です。
ただ血と同じ赤色は、古代人にも共通して危険や警戒心を引き起こす色だったと考えられます。
そのため、生徒の注意を引き、強く印象に留める方法として「赤いインク」が最も有効だったのかもしれません。
この頃から続き改良を重ねられた添削技術の完成度の高さ…。