水中で「208日間以上」乾いた状態を保てる表面を開発
今回アイゼンバーグ氏ら研究チームは、ミズグモの表面が持つ安定性について、従来より多くのパラメーターを分析しました。
これまでは疎水性表面の評価は2つのパラメーターしか考慮されていませんでしたが、今回は「表面の粗さ」「表面分子の疎水性」「接触角(固体上の液滴のふくらみの程度)」など、より多くのパラメーター群を特定。これらを熱力学の理論と組み合わせることで、空気の安定化の秘訣を解明することに成功しました。
研究チームが行ったことは、これまで見逃されてきたより重要なパラメータを特定し、それを製造に組み込むという単純な方法でした。
しかしこれにより従来のシンプルな製造技術を用いて、広く普及している安価なチタン合金を超疎水性表面として加工することに成功しました。
この新しい材料は、これまでよりも数千時間長く乾燥状態を保てつことが可能だといいます。
研究チームは、課題だった「安定性」をテストするため、材料を曲げたりひねったり、熱水や冷水をかけたり、砂や鋼で擦ったりしました。
さらに208日以上連続(研究発表の時点で継続中)で水中に沈めたり、血液に何百回も浸したりしました。
それでも新しい表面は、劣化することなく疎水性を保つことができたといいます。
加えてこの表面は、大腸菌やフジツボの増殖を大幅に抑制し、ムール貝の付着を完全に無くすことにも成功しました。
研究チームは、この超疎水性表面を様々な分野に応用できると考えています。
例えば、術後の感染を抑える生体医療機器や腐食しない水中センサーなどに利用できるかもしれません。
そして今回はチタン合金でこの表面を作りましたが、別の材料を用いることで可能性がさらに広がることでしょう。
「水の中でも数カ月間濡れない表面」は、私たちの生活をさらに快適にしてくれるはずです。