睾丸が移動するケースとは
そもそも睾丸が格納されている袋、すなわち陰嚢から移動することはありえるのでしょうか?
男性ならば陰嚢はかなり不安定で明確に固定されている臓器ではないという感覚は持っていると思います。
左右の睾丸は陰嚢の中で精索(せいさく)という精管・血管・神経・リンパ管が束ねられた紐のような構造によって繋がっているだけで、体内でしっかりと固定された位置を持つ臓器ではありません。
精巣はもともと新生児ではお腹の中で作られる臓器で、それが徐々に下降して来ることで、陰嚢に収まります。そのため精巣は体内で動きやすい臓器と言えます。
男性であれば寒さや恐れを感じた時、睾丸が腹部のほうへ引き上げられる感覚を覚えることがあると思いますが、これは筋肉の反応によって睾丸が移動しているためです。
また一部の武術には「コツカケ」と呼ばれる技があり、筋肉を駆使することで意図的に睾丸を腹部の中に隠し男性の弱点を防御することができるとも言われています。
そのため今回の事故のように外部からの衝撃などによって睾丸が陰嚢から外れて移動してしまう場合があります。これらの症状は睾丸脱出(精巣脱出)と呼ばれ、ほとんどの場合が交通事故など、大きな衝撃を受けた時に起こる稀なケースです。
他にも睾丸捻転(精巣捻転)と呼ばれる、睾丸が精索を軸として捻れてしまう症状があります。これも稀なケースですが、睾丸捻転は睾丸脱出とは違い、寝ているときに発症することが多く、また、思春期前後の少年に発生しやすいのが特徴です。
今回、バイク事故で不幸な事態に陥った男性には、睾丸脱出が起こったと考えられますが、睾丸はどのようにして腹部まで移動したのでしょうか。