テューラは「Bluetooth」の語源となったハーラル1世の母親
ヴァイキング(Viking)は、西暦800年〜1050年の間に北西ヨーロッパの海を侵略した北欧の武装集団を指します。
約250年に及ぶヴァイキング時代に様々な王が誕生しましたが、その中で最も有名な王としてよく名前が挙がるのがハーラル1世(?〜986)です。
ハーラル1世は958年〜985年頃までデンマーク王として君臨し、その治世においてデンマークとノルウェーを平和的に統一した偉大な功績で知られています。
最近は歴史を参考にした漫画作品も多く存在するため、ヴァイキングをテーマにした人気漫画『ヴィンランド・サガ』のクヌートの祖父にあたる人物というとイメージしやすい人も多いかもしれません。
またハーラル1世は”青歯王(ブルートゥース)”というあだ名でも有名です。
この由来には諸説ありますが、一説によるとデンマーク語の「青歯(Blåtand)」は、「青い・浅黒い」を意味するBlåと「首領・族長」を意味するThegnを組み合わせて、「浅黒い首領」という意味があるといいます。
ちなみにこの”青歯王”は、先ほどのデンマークとノルウェーを平和的につないだ功績にちなんで、複数の電子機器をつなぐ通信技術のBluetoothの語源となりました。
あの有名なBluetoothのロゴも、ハーラル1世”青歯王”(Harald Bluetooth)のイニシャルをルーン文字「ᚼ(=H)」「ᛒ(=B)」で組み合わせたものです。
このように現代の通信技術にまで名を残しているハーラル1世ですが、新たな調査により、当時のヴァイキング社会には彼よりもずっと有名な人物がいた可能性が浮上しました。
それが「テューラ(Thyra)」という女性であり、彼女は何を隠そうハーラル1世の母親なのです。
ハーラル1世の父親は、デンマーク最初の国王とされるゴーム老王(?〜958年)であり、テューラはその妻、つまり王妃に当たります。
では、なぜテューラの方がハーラル1世よりも有名だったと言えるのでしょうか?
研究者いわく、その秘密はヴァイキングたちが亡くなった重要人物を追悼するために建てた「ルーン石碑」に隠されていたようです。