エンコールバースが起こりやすい条件とは?
エンコールバースが確実に起こる条件は知られていませんが、ボイル氏は「その発生率を高める要因ならいくつか存在する」と指摘します。
1つ目は「早産」です。
一般的に妊娠37週〜42週での出産を「満期産」といいますが、それ以下の短い妊娠期間で出産すると早産となります。
早産で生まれる赤ちゃんは体が未発達で小さい傾向にあり、羊膜への圧力が小さいので、出産前に羊膜を破れないことがあるのです。
そのため、羊膜ごと産道を通る可能性も高くなります。
2つ目は「非常に迅速な出産」です。
たとえ満期産だったとしても、出産直前の陣痛やお産の流れが極端に速い場合、羊膜が破れることなくスルリとそのまま出てくることがあるといいます。
3つ目は「帝王切開」です。
帝王切開は何らかの問題が生じて通常の出産が難しいときに、外科的な開腹によって赤ちゃんを取り出します。
ここでも羊膜が破れていなければ、そのまま取り出されることがあるようです。
母子ともにまったく無害
最も気になるのは、エンコールバースが赤ちゃんや母体にとって危険がないのかどうかでしょう。
しかしボイル氏によると、羊膜ごと生まれても母子ともに何の悪影響もないといいます。
というのも通常の出産とエンコールバースでは「羊膜が体内で破れるか、体外で破れるか」の違いしかありません。
羊膜ごと生まれたとしても、赤ちゃんはへその緒を通じて十分な酸素が送られているので、羊水の中でも生存できます。
あとは羊膜を破いて、赤ちゃんを取り出すだけです。
羊膜は非常に薄い皮なので、指を突き刺すだけで簡単に破れます。
例えば、このように。
An en caul birth is a rare event where a baby is born still inside an intact amniotic sac pic.twitter.com/EK7I7ZiS2C
— JIX5A (@JIX5A) August 30, 2023
羊膜から出た赤ちゃんは肺の中の羊水を吐き出して、肺呼吸へと移っていきます。
この映像でも羊膜を破いた途端に、元気よく泣き始めているのが分かりますね。
一方でボイル氏は、エンコールバース自体は何も心配する必要はないが、懸念すべき点があるとすれば、赤ちゃんが未熟児である場合だと指摘します。
先ほど言ったように、エンコールバースは早産で発生する確率が高く、体の小さな未熟児は呼吸障害や発達の遅れ、視覚や聴覚の問題を起こしている可能性があります。
もし赤ちゃんがエンコールバースで生まれた場合は、身体機能に未発達や異常がないかを調べてもらうべきでしょう。
いずれにせよ、エンコールバースは本来なら見る機会のない、お母さんの胎内にいるときの赤ちゃんの様子が垣間見える貴重な姿です。
生命の神秘を感じますね。