色は匂いの感じ方を変える
かき氷のシロップは実は全部同じ味であるという話は聞いたことがあると思います。
ただこの話にはトリックがあり、味は同じですが、香料や色がシロップごとに異なっています。
赤くてイチゴの香りがすれば、ただの砂糖水でもそれはイチゴ味に感じますし、黄色くて柑橘系の香りがすればそれはレモン味に感じます。
これは同じ味なのに気づかない私たちが鈍感だというよりも、私たちの感覚において匂いや色が与える影響がいかに大きいかを示す例と言えるでしょう。
そのため、味や匂いに非常に敏感なプロのワインテイスターであっても、白ワインを赤く着色してしまうと、赤ワインと誤認してしまうという研究報告もあります。
この色による匂い、風味の誤った認識は、匂いと味に関する高い識別能力を持っていたとしても回避できないのです。
このような視覚と嗅覚、味覚などの異なる感覚同士の結びつきは「感覚間協応(Crossmodal correspondence)」と呼ばれています。
感覚間協応は、他にも音と味、温度と色などさまざまな領域で見られますが、一般的にその対応は双方向であると考えられています。
そこでリヴァプール・ジョン・ムーア大学のライアン・ワルド氏らの研究チームは、色が匂いの感じ方に影響を与えるだけでなく、特定の匂いによっても色の見え方が変わるのではないかと考え、実験を行いました。
実験には嗅覚と視覚に異常のない24名が参加しました。
他の匂いの影響が実験の結果を左右しないよう、被験者たちには実験当日は香水やデオドラントをつけないようにしてもらっています。
実験では、6種類の匂い(レモン、ペパーミント、コーヒー、キャラメル、チェリー、コントロール条件としての無臭)をランダムに選び、超音波ディフューザー(アロマを霧状に拡散させる機械)を用いて実験室に充満させました。
実験では参加者に、特定の匂いがする部屋の中で、PC 上に提示されたランダムな色の四角形を色調節スライダーを使って、灰色に調整してもらいました。
この色調節スライダーは2つあり、赤-緑、黄-青の調節軸をそれぞれ動かし完全な灰色になるよう調整します。
もし研究者の予想通り特定の匂いで色の見え方が変わるならば、匂いによって色の知覚が歪み、調整結果に偏ったズレが生じるはずです。
たとえば、レモンの匂いを嗅いだ時には、四角形の色を灰色よりも少し黄色みを増した色に調整してしてしまう可能性があります。
またこの実験では、被験者に部屋の中で嗅いだ匂いが何であったかも回答してもらっています。
さて、匂いを嗅ぐことで色の見え方はどう変わったのでしょうか。