都会の高温ストレスで「植物」が進化している?
都会を最も特徴づけているのは、街中の地表がアスファルトやコンクリートで覆われていることでしょう。
こうした水を通しにくい地表面は、熱の吸収し溜め込みやすいため、都市部の高温化を引き起こします。
いわゆる「ヒートアイランド現象」です。
道路の側やコンクリートの隙間に生える雑草たちは、ヒートアイランドの高温ストレスを最も強く受けています。
雑草は自分たちで日陰に入ったり、日傘を差したりできないので、ときに50℃を超える地表面にも耐えなければなりません。
その中で世界中の研究者たちは「高温ストレスが雑草の高温耐性を進化させているのではないか」と考えていました。
しかし、都市部の高温が植物をどう進化させているかは、いまだ誰も調べていませんでした。
赤葉のカタバミは都市部に多い
そこで深野氏ら研究チームは「カタバミ」という世界中の都市や農地に生えている植物に注目しました。
カタバミはよく道路やアスファルトの割れ目から顔を出しており、日本でも簡単に見ることができます。
実はカタバミには、通常の緑の葉をもつ個体だけでなく、真っ赤な葉をもつ個体がおり、種内に葉色の変異があることが知られていました。
また赤葉のカタバミは、季節によって緑から赤に変色する紅葉とは違って、生まれたときから赤いままです。
つまり、カタバミの葉色の違いは遺伝子で決まっている遺伝的変異の結果といえます。
そしてチームは以前から、赤葉のカタバミが都市部に多いことに気づいており、これはヒートアイランドに対する適応進化かもしれないと考えていました。
「カタバミは本当に都会の暑さによって赤く進化したのか?」
チームはその真偽を確かめることにしました。