どうして皮膚がんに効く「石鹸」を作ったのか?
3Mヤング・サイエンティスト・チャレンジ(About The Challenge)は、アメリカの高校5〜8年生(10〜14歳)を対象とした国内トップクラスの科学コンテストです。
今年度のコンテストは2022年12月7日にスタートし、多くの参加者たちが”アメリカで最も優秀な若き科学者(America’s Top Young Scientist)”の称号を目指して、自身の発明に取り組みました。
ベケレさんも当時、コンテストに出品するためのアイデアに頭を悩ませていたといいます。
そんな中、幼少期に体験した一つの思い出が蘇りました。
彼はもともとアフリカ東部エチオピアの生まれであり、そこで容赦なく照りつける太陽の下、懸命に働く人々の姿を毎日のように目にしていたのです。
ベケレさんは4歳のときに渡米しますが、それからも日に焼かれて働く母国の人々が忘れられなかったそう。
そこで彼は日焼けを原因とする「皮膚がん」を低コストで治療できるようなアイデアに取り組むことにしたのです。
実際、過度の日焼けは皮膚の細胞膜を傷つけることがよく知られています。
長年にわたって強い光を浴び続けると、皮膚の弾力性が失われ、シミやシワが目立つようになります。
これは光老化と呼ばれる現象で、「メラノーマ(悪性黒色腫)」などの皮膚がんの発症因子になると考えられています。
メラノーマとは、表皮にあるメラノサイトががん化した悪性腫瘍で、機能不全により紫外線から身を守るメラニン(色素)を作り出せなくなるものです。
メラノーマは、アフリカを含む第三世界の肉体労働者にとって、発症リスクが高い上に高価な治療費が払えないという点で非常に問題視されています。
ベケレさんはこれを踏まえ、誰でも簡単に入手できる「石鹸」に皮膚がんの治療効果を持たせようと考えたのです。