石鹸はどうやって皮膚がんに対抗するのか?
ベケレさんの画期的なアイデアはコンペの審査員に評価され、3Mプロダクトエンジニアリングの専門家であるデボラ・イザベル(Deborah Isabelle)氏のサポートの元、研究と開発がスタートしました。
ベケレさんはまず、メラノーマの仕組みについて研究し、皮膚がんを治療するには免疫細胞の一部である「樹状細胞」を再活性化させることが重要であると特定。
そうして数カ月の実験の末、がん細胞によって損傷された樹状細胞を再活性化させ、がんに対抗する自己防衛機能を回復させる石鹸の開発に成功したのです。
ベケレさんはこれを「皮膚がん治療石鹸(Skin Cancer Treating Soap:SCTS)」と命名しました。
石鹸に用いた化合物のレシピも明かしており、サリチル酸40mg、ココナツオイル680g、トレチノイン12mg、グリコール酸20mg、オーガニックシアバター680g、非加熱の生ハチミツ小さじ2となっています。
そして驚くべきはその安価なコストです。
アメリカ国内では一般的に、メラノーマの治療に約4万ドル(約600万円)の費用がかかりますが、ベケレさんの石鹸は3~4カ月分(20個)でわずか10ドル(約1500円)しかかかりません。
ベケレさんは「自分のアイデアを科学的に役立つだけでなく、できるだけ多くの人が利用できるものにしたかったのです」 と話しています。
太陽の下で肉体労働をした後に、この石鹸を使って体を洗えば、誰もが低コストで皮膚がんの早期治療が可能になるかもしれません。
そしてベケレさんの発明は、今月9・10日(2023年10月)にミネソタ州セントポールの3M本社で開催された最終発表で、見事グランプリに輝きました。
ベケレさんは”アメリカで最も優秀な若き科学者”として様々なメディアに取り上げられており、一躍”時の人”となっています。
しかし、彼の最終目標はコンテストの優勝ではありません。
ベケレさんは今後、自身の発明をさらに改良し、この石鹸を十分な医療サービスを受けられないコミュニティに配布するための非営利団体を5年以内に設立したいと構想しています。
天才少年の躍進はまだまだ続きそうです。
※今回のコンテストは、若年の科学者の研究に対して送られているものです。
14歳の少年が、皮膚がんの治療を目指してがんの原因について調査を行い、その治療法についての推測を立て、それに従って第三世界の医療サービスを受けにくい人々が簡単に利用できる形態で提供可能な製品を設計し、実際にそれを製造してみせたという、科学的プロセスが評価されたものと考えられます。
薬品として臨床的な調査がなされていないという点を問題にするのは、もっと後の段階の話になるでしょう。
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