ためこみ症の悪化は「身の危険」にもつながる
現代の消費社会において、ためこみ症は珍しい疾患ではなく、人口の2〜6%が罹患していると推定されています。
大抵は若いときに軽度の状態で発症するケースが多く、歳を取るにつれて悪化し、どんどん物が捨てられなくなり、部屋は物で溢れ返ります。
ためこみ症の人は物を取っておくことに強い執着を感じ、必要のないものまで過度に集めてしまう特徴があります。
加えて、物を手放すことに苦痛を覚えるため、部屋の物は増えるばかりで全く減っていきません。
この状態が続くと、屋内移動や料理、睡眠など日常生活に支障をきたし、さらに衛生環境の悪化(害虫やネズミの発生)や火災リスクの増加など、あらゆる問題が発生しやすくなるのです。
こうしたためこみ症が悪化した状況は、「ゴミ屋敷」問題として見かけたことのある人も多いでしょう。
この症状は特に年配の方ほど重症化しやすく、55歳以上の人で治療の必要なケースが頻繁に見られるといいます。
ためこみ症の一般的な治療としては、凝り固まった考えや行動を柔軟にする「認知行動療法(CBT)」や、同じ症状を抱える人が一緒に心理療法を受ける「グループワークショップ」などがありますが、十分に高い効果は得られていません。
そこで研究チームは今回、急速に発達している「VR技術」を使った革新的な治療法を考案しました。
研究主任のハンナ・ライラ(Hannah Raila)氏は「VR空間で物を捨てる練習をすることで、物を手放すことの苦痛を和らげ、実際に物が捨てやすくなると期待される」と話します。
では、その実験方法を見てみましょう。