聖典の中でしか生きていなかったヘブライ語
ヘブライ語は大きく分けると、太古の時代に使われていた聖書ヘブライ語と、現代のイスラエルで使われている現代ヘブライ語に分類できます。
聖書ヘブライ語は紀元前のイスラエルの地で使われており、名前の通り旧約聖書にも使われていました。
しかし紀元前4世紀から前2世紀にかけて、イスラエルの住民は主にアラム語とギリシャ語を使い始めるようになり、ヘブライ語は紀元前2世紀ごろには日常語として使われることは無くなったのです。
それでもヘブライ語は聖典の言葉としては引き続き使われており、学者や祈りの言葉として使われていました。
やがて時代が下ると、地中海地域はイスラム世界とキリスト教世界に分かれることとなりました。
そのうちヘブライ語が進化を遂げることになったのはイスラム世界です。
イスラム支配下でアラビア語が主流となり、スペイン(当時はイスラム支配下だった)のラビ(ユダヤ教の指導者のこと)・イェフーダー・ハイユージュ(Yehuda Hayyuj)の手によって最初のヘブライ語文法書をアラビア語で著しました。
ハイユージュはアラビア語の文法の専門家でもあり、アラビア語の文法研究で使われていた理論をヘブライ語にも適応することによって、はじめて組織的なヘブライ語の文法書を完成させたのです。
当時はイスラム世界がキリスト教世界よりも発展しており、アラビア語の文献を持ち込んで技術や知識を向上させようという動きがあり、ハイユージュの文法書もその動きの一環としてキリスト教世界に持ち込まれました。
またハイユージュのいたスペインに至ってはヘブライ文学や詩などが発展したのです。
これらの歴史的な段階を通じて、ヘブライ語は滅びず、ユダヤ人は1900年以上にわたり、ヘブライ語を守り続けてきました。