うつ病リスクが高い女性の脳は、批判を受けた時に活性化する
今回の研究では、最初に、「うつ病を経験したことがない人たち」1126人をスクリーニング(ふるい分け検査)しました。
彼らは5因子人格検査「NEO-FFI」により、神経症傾向(ストレスの感じやすさ、不安や緊張の強さ)が評価されました。
そして上位20%(高度に神経質)と、40~60%(標準的)なグループの女性のみ(平均20~21歳)を、次の実験に参加させています。
神経症傾向が強い人は、感情が不安定になったり、ストレスの要因に対して敏感になったりする傾向があり、うつ病のリスクが高いと言えます。
つまり研究チームは、「うつ病リスクが高い女性(25人)」と「標準的な女性(28人)」を比較しました。
実験では、参加者たちに「批判と称賛が入り混じったコメント」を30秒聞かせました。
例えば、以下のコメントが含まれていました。
「あなたは他人への思いやりがありません。自己中心的なところがあるのです」
「あなたの好きなところの1つは、ユーモアのセンスです。あなたは本当に面白いです」
参加者たちは、これらのコメントが自分の人生にとって本当に大切な人から言われたものだと想像するよう指示されています。
また参加者たちは、反すう傾向を評価する尺度「Ruminative responses scale」により、反すう特性が測定されています。
これらの結果、うつ病リスクの高い女性は、標準的な女性と比較して、デフォルトモードネットワーク(DMN)が、批判を聞いた後に、より活性化すると判明しました。
(特に内側前頭前皮質と下頭頂小葉の2つの脳領域で活性化が見られました)
しかし、称賛を聞いた後の反応では、うつ病リスクの高い女性と標準的な女性に大きな差は生じませんでした。
つまり、うつ病リスクのある女性のDMNは、称賛ではなく、批判を受けた時にのみ活発になり、ネガティブな情報を優先して処理していることがわかります。
さらにこれらの偏った脳活動は、反すう思考と関連していることも分かりました。
研究チームは、これらの結果が、「後にうつ病を発症する人の潜在的な脆弱性を反映している可能性がある」と述べています。
そして「内側前頭前皮質や下頭頂小葉を標的とした治療が、うつ病の予防として役立つ可能性がある」とも続けています。
もちろん、今回扱われた要素だけが、うつ病の危険因子ではありません。
しかも研究のサンプルサイズは小さく、参加者が若い女性のみで構成されていたことからも、他の実験では同じ結果が生じない可能性もあります。
ただ、心理学の研究では自身を過小評価する人は、自分を褒める相手に対して、自分のことを分かっていないと考え、逆に自分を批判する人に対しては、自分を正しく見てくれていると、その意見を信じやすくなることが示されています。
これは今回のうつ傾向の人は批判に対して脳が活性化するという結果と関連しているかもしれません。