ヒト脳細胞をチップと融合させた「日本語の音声識別AI」を開発!
ヒト脳細胞をチップと融合させた「日本語の音声識別AI」を開発! / Credit:CLIP STUDIO . 川勝康弘
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人工培養脳をチップに融合させ「ひらめき」で考えるバイオAIを開発!

2023.12.13 Wednesday

未来のAIは生ものなのでしょうか?

米国のインディアナ大学ブルーミントン校(IU Blo)で行われた研究によって、人工的に培養されたヒト脳細胞(脳オルガノイド)をチップと融合させた、ヒト音声の識別が可能なAIが作られました。

脳オルガノイドを情報処理の中枢として設置することで、普通のコンピューターとは違いCPUとメモリの統合が可能となっており、別次元のAIシステムとして、より人間に近い高度な情報処理能力が期待されます。

ただ研究者たちは、中枢となる脳オルガノイドを巨大化・高度化させた場合には、意図せず意識や感情が芽生えてしまう可能性もあり、バイオAIの開発には倫理的配慮が求められると述べています。

研究内容の詳細は2023年12月11日に『Nature Electronics』にて掲載されました。

Human brain cells hooked up to a chip can do speech recognition https://www.technologyreview.com/2023/12/11/1084926/human-brain-cells-chip-organoid-speech-recognition/
Brain organoid reservoir computing for artificial intelligence https://www.nature.com/articles/s41928-023-01069-w

ヒト脳組織をAIのパーツとして組み込む

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Credit:Hongwei Cai et al . Brain organoid reservoir computing for artificial intelligence . Nature Electronics (2023)

人間のはどんなコンピューターよりも強力な演算装置です。

通常のコンピューターは1つ1つの処理を前から順番に完了させることしかできませんが、私たちの脳は多くのタスクを同時並列的に処理できます。

そのため、友達と電話をしながら料理をしつつ、動画を鑑賞するといった離れ業も無意識的に可能になります。

ですが何より決定的なのは、脳では情報処理を担うプロセッサ(CPU)と情報を記録するメモリが、一体となっている点にあります。

現在のほぼ全てのコンピューターではCPUとメモリは物理的に隔てられて設置されており、両者の通信速度によって性能が頭打ちになってしまいます。

これは現在のコンピューターが抱える避けられない問題であり、フォン・ノイマン・ボトルネックとして知られています。

このボトルネック効果による処理速度の頭打ちは、AIの性能においても重大な問題を引き起こしています。

そのため近年では、既存の制限を乗り越えるために、ヒト脳組織を使ったコンピューターの開発が行われるようになってきました。

といっても、SFのように生きている人間から脳を引き抜くわけではありません。

ヒト脳細胞をチップと融合させた「日本語の音声識別AI」を開発!
ヒト脳細胞をチップと融合させた「日本語の音声識別AI」を開発! / Credit:Hongwei Cai et al . Brain organoid reservoir computing for artificial intelligence . Nature Electronics (2023)

実験に使用される脳組織は、万能性のある幹細胞を脳細胞に変化させることで作成される人工培養脳(脳オルガノイド)です。

ヒト脳オルガノイドは人間の脳細胞から構成されており、局所的に人間の脳に似た構造をとり、簡単な誘導で1対の目を生やすなど本物の脳とよく似た挙動を示します。

「目がある人工脳」を作り出すことに成功、視神経もあり光を検知

そのため既に人体実験の代替品として、薬剤テストや遺伝子組み換えの研究が進んでいます。

たとえば以前の研究では、脳以外に人工培養された皮膚・肺・肝臓などの複数臓器をカートリッジ化して接続することで、疑似的な人体を構成し人体実験の代用とする計画が提唱されています。

複数のオルガノイドを基盤の上に配置した様子。左下の呼吸する肺から出た酸素の多い体液は赤で示され、各臓器から戻って来る酸素の少ない体液は青で示されている
複数のオルガノイドを基盤の上に配置した様子。左下の呼吸する肺から出た酸素の多い体液は赤で示され、各臓器から戻って来る酸素の少ない体液は青で示されている / Credit:youtube.TissUse

また脳オルガノイドを演算装置のパーツとして組み込む試みは以前にも行われており、2021年に行われた研究では、脳オルガノイドを使ってテニスゲームをプレイさせることにも成功しています。

そこで今回、インディアナ大学の研究者たちは新たな試みとして、人間の脳組織を搭載したバイオAI「Brainoware」の開発を行い、日本語の音声認識や高度な方程式(エノン写像:Hénon map)を解けるかを検証することにしました。

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