誘いを断られた側はそんなに気にしてなかった?
研究チームは今回、2000人以上の参加者を対象とした5つの心理実験を行い、そのうち2つの具体的な実験結果について報告しています。
まず1つ目は382人の一般男女を対象にオンライン調査を実施しました。
参加者を2つのグループに分け、一方は架空の友人から「週末に地元の美術館で展覧会があるから一緒に行かない?」との誘いを受け、それに対して「申し訳ないけど家でゆっくりしたいから」とお断りの返事をするシチュエーションについて想像してもらいます。
もう一方は反対に、架空の友人に美術館の展覧会に一緒に行こうと誘って、断られるシチュエーションを想像してもらいました。
その後、前者のグループには「招待を断ったことで相手がどう思っているか」「今後の関係性にどれほどの悪影響が出るか」などを、後者のグループには「友人に招待を断られたことでどう感じたか」を評価してもらいます。
その結果、前者のグループは、自分が誘いを断ったことで相手が怒ったり、失望していると考える傾向が強く、今後の友人関係にも悪影響を及ぼすと答える可能性が高いことが分かりました。
これは実際に友人や同僚の誘いを断った経験のある人には気持ちがわかるでしょう。
電話口で誘いを断ったはいいものの、「なんか相手のテンション低くなってたな、もしかして嫌われたかも」とドギマギしたことがあると思います。
ところが後者のグループの回答を見ると、誘いを断った参加者たちに比べて、誘いを断られたことをそれほど気にかけていないこと、相手に対して悪い印象を持っていないこと、これからの友人関係にも影響はないと考えていることが示されたのです。
これを受けて、研究主任のジュリアン・ギヴィ(Julian Givi)氏は「誘いを断った人々は一貫して、誘ってくれた相手に与える負の影響を過大評価しすぎていることが分かりました」と述べています。
どうして誘いを断った側と断られた側で、これほど思いに違いが出るのか?
その原因についてギヴィ氏は「誘いを受けた側は”誘いを断った”ことだけに焦点を当てますが、誘った側は相手が誘いを断った理由や経緯を考慮しているからでしょう」と指摘しました。
要するに、誘いを断る身としては「ヤバい、断ってしまった」という事実のみを過度に思い込んでしまうので、焦りや申し訳なさが募りやすくなります。
他方で、誘いを断られた側は「何か用事があったのかな」とか「体調がすぐれないのかも」と、相手が誘いを断るに至った事情を考慮するので、断られたこと自体はそんなに悪く思っていない可能性が高いというのです。
男女のカップルでも同じ傾向が見られた
2つ目の実験では、160名の男女のカップルを対象としました。
参加したカップルの交際期間は、4%が6カ月未満、1%は6〜12カ月、21%は1年から5年、74%は5年以上となっています。
調査では、カップルの片方に今後数週間でしたいデートのお誘い(映画を見に行ったり、レストランで外食したり、公園で散歩するなど)を手紙に書いてもらいました。
その手紙を読んだパートナーには「家でのんびりしたいから」とお断りの返事を書いてもらいます。
そして先の実験の同じように、それぞれが誘いを断ったこと / 断られたことについてどう思うかを回答してもらいました。
するとカップルの交際期間の長さに関係なく、デートの誘いを断った側はパートナーが実際よりも怒っていると感じる可能性が高いことが分かったのです。
反対に、デートを断られた側はやはり相手の事情を汲み取って、あまり気にかけていないことが示されています。
これを受けてギヴィ氏らは、たとえ長年の親密な関係性であっても、人々は誘いを断ることの負の影響に対して過大評価する傾向にあると結論しました。
「私自身、どうしても行きたくないイベントに招待されたとき、断ると招待してくれた人を怒らせてしまうのではないかと不安になって、とりあえず参加した経験があります。
しかし今回の研究では、誘いに”No”ということの悪影響は、私たちが考えているほど深刻ではないことが分かりました」
おそらく、お誘いを断った相手から嫌われるのは、同じ相手からの誘いを何度も繰り返し断り続けた場合でしょう。
そういうときは相手に「あいつ付き合い悪いな」と思われて、徐々に友人関係が冷めていくかもしれません。
ただ、どうしても行きたくない・行けない理由があるのであれば、思い切って断ってしまっても人間関係に支障は出ないと考えられます。
これから年末・年始にかけて何かとお誘いが多くなると思いますが、Yes・Noをうまく使い分けて有意義な時間をお過ごしください。