チームの構成員の積極性で求められるリーダーが変わる
そこで米ペンシルベニア大学のアダム・グラント氏(Adam Grant)らは、チームの構成員の積極性とリーダーの性格の関係性を調べました。
実験には大学生163名が参加しました。
彼らは参加者を5人1グループに分け、その中の1名をリーダーに任命し、10分間にできる限りTシャツをたたんでもらっています。
また参加者のモチベーションを高めるために、Tシャツの畳む枚数が上位10%に到達した場合には、iPod Nanoが商品として渡されることも伝えました。
研究チームはリーダーの振る舞いを実験操作すべく、リーダーになった参加者を2つの群に分け、以下の文章を読んでもらいました。
低外向性群:「科学的な調査で、内向的なリーダーが高いパフォーマンスを上げることが証明されている。マハマト・ガンディーなどのように物静かで、思慮深い人物がチームメンバーを成功に導く」という趣旨の文章を読む
高外向性群:「科学的な調査で、外向的なリーダーが高いパフォーマンスを上げることが証明されている。ジョン・F・ケネディなどのように大胆で、積極的な人物がチームメンバーを成功に導く」という趣旨の文章を読む
分析ではリーダーの外向性、そして他のメンバーの積極性の高低でTシャツを畳む枚数が変わるかを比較しています。
まず実験操作の確認として、低外向群の参加者は自己評価とメンバーからの評価の両方で内向的、高外向群は外向的であると評価されました。
そして実験の結果、前述した実験と同様にメンバーの積極性が低い場合には、外向性が高いリーダーのほうが、メンバーの積極性が高い場合には、外向性が低いリーダーのほうが多くのTシャツを畳むことができたのです。
ではなぜチームの構成員の積極性でパフォーマンスが高まるリーダーの性格が変わるのでしょうか。
それは意見やアイデアをを持っているメンバーとリーダーの間で衝突が起きるからではないかと考えられています。
実際に実験の中で積極性の高いメンバーは、外向的な振る舞いをしたリーダーよりも、内向的な振る舞いをしたリーダーに対し、個人の意見をよく聞き、変化に対して柔軟な考えを持っていると評価しています。
今回の2つ目の実験ではTシャツの効率の良い畳み方を一早く発見し、チーム全体で取り組む必要がありました。
この効率的なTシャツの畳み方は、リーダーが全体に指示するよりも、たまたま他のメンバーがどこかで知った良いやり方を全体で共有したほうが上手くいく可能性が高いと言えます。
このような状況はTシャツを複数人で畳む場面に留まりません。
企業の業務改善や企画のアイデアなど、中心メンバーだけで意見を出すよりも、全体の意見やアイデアを吸い上げることで、より良い解決策を発見できるかもしれないのです。
内向的なのにリーダーになってしまったと感じている人は、メンバーに積極的な人物を引き入れれば上手くチームを回せるようになるかもしれません。
内向的なリーダーは周りの話を上手く汲み取ることができ、結果としてメンバーは自分の意見が受け入れられたと感じ、モチベーションを高めることにつながるのです。
この報告は、仕事のチームを組む際、単にコミュ力が高い人物をリーダーにあてがえばチームが上手く動くわけでは無いことを示しています。
チーム全体を編成する立場の人は、チームメンバーの特性からリーダーとなるべき人物を考えるべきであり、もしあなたが自分でメンバーを選定できる立場のリーダーなら、自分の性格が外交的なのか内向的なのかを考慮して、仲間を指名すると上手くいくかもしれません。