従来のクローン作成は成功率が低い
クローン技術は、親となる個体とまったく同じ遺伝子をもつ個体を作り出す技術です。
世界最初のクローン個体は1996年にイギリスで生まれた羊のドリーでした。
それ以来、科学者たちはブタ、イヌ、マウス、ウシ、ウサギなど、様々な哺乳類のクローン作成に成功してきました。
その一方で、より人間に近い霊長類のクローンは倫理的な問題だけでなく、技術的にも困難なものとなっています。
霊長類のクローン作成には主に猿が用いられますが、代理母の子宮に移植されたクローン胚の半数以上が60日以内に死亡しているのです。
また奇跡的に生まれたとしても、ほとんどが数時間〜数日も生存できません。(ドリーは6歳まで生きたと報告されている)
一体、どこに問題点があるのでしょうか。
従来のクローン技術「体細胞核移植(SCNT)」とは?
クローン作成に用いられる従来の方法は「体細胞核移植(somatic cell nuclear transfer:SCNT)」と呼ばれるものです。
これはクローン化したい個体Aの組織から体細胞を取り出し、さらにそこから遺伝情報を含む「核」を抽出します。
そして代理母となる別の個体Bから卵細胞を採取し、その中の核を抜き出して、代わりに個体Aの核を移植し、代理母の子宮に戻して発生を促す方法です。
羊のドリーや他のクローン動物も同じSCNTの原理が用いられています。
実は中国科学院のチームは2017年に、SCNTを用いて、カニクイザル(学名:Macaca fascicularis)のクローン作成に成功していました。
中中(Zhong Zhong)と華華(Hua Hua)という2匹のクローン猿が誕生しており、現在もまだ存命で、すでに6歳を超えているという。
しかしながら、SCNTは基本的に成功率がきわめて低いことで知られ、死産の発生率も高く、無事に生まれたとしても大半がすぐに死んでしまいます。
中中と華華も何百回というSCNT試験の中で奇跡的に生まれた2匹であり、偶然の力に大きく左右されているのです。
こちらがSCNTで生まれた中中と華華の映像。
そこで研究チームはSCNTのどこに問題があるかの解明を試みました。