セルフレジは意外と不利益が大きい?
米ドルー大学(Drew University)の社会学者であるクリストファー・アンドリュース(Christopher Andrews)氏によると、セルフレジが開発されたのは1980年代のことで、1990年代から店舗に少しずつ導入され始めたといいます。
小売業者たちはセルフレジの普及により、コスト削減の新時代の到来を期待していました。
それもそのはず、従来の有人レジであれば一台ごとに店員が必要であり、人件費も高くつきます。
しかしセルフレジであれば、バーコードの読み取りから会計、袋詰めまで、すべての工程を買い物客自身がしてくれるので、人件費を大幅にカットできるのです。
それゆえ、この画期的な装置は小売業界に革命を起こすはずでした。
ところがアンドリュース氏は「ほとんどの場合、セルフレジは事前に予想されていた期待に応えていない」と指摘します。
まずそもそも、セルフレジの製造や導入には多大なコストがかかります。
顧客の要求に柔軟に対応するため、従来のレジにはないタッチスクリーンや高度なバーコードスキャナー、それからクレジットカードや電子マネー決済にも対応したハードウェアが必要です。
さらに故障のリスクがあるため、定期的なメンテナンス費用もかかります。
アメリカの小売業界では、数十億ドルとは言わないまでも、数百万ドルをセルフレジ技術に投資しているといいます。
加えて、セルフレジの弱点となっているのが窃盗の増加です。
対面する店員がいないので、バーコードスキャナーに品物を通さずに万引きすることが容易になっています。
英レスター大学(University of Leicester)による2017年の調査では、セルフレジを利用している小売業者の損失率は業界平均の2倍以上に達していることが報告されました(Security Journal Article, 2017)。
しかし最大のデメリットは、顧客に与える負担の大きさにあると考えられます。