忙しい若者の睡眠時間を「あとちょっと」延ばす試み
研究を紹介する前に、まず「睡眠不足」の定義を明確にし、その影響について整理をしておきましょう。
ここでいう睡眠不足とは、「米国睡眠医学会が推奨する最低7時間の睡眠時間に満たない状態」のことです。
先行研究により睡眠不足は、体にさまざまな悪影響を及ぼすことがわかっています。血糖値の調整能力低下、血圧や心拍数の上昇、ホルモンバランスの乱れなどが含まれます。
20歳以上の成人では、睡眠不足が体内の水分バランスに影響することも示されています。これは、睡眠不足によって腎臓などの機能が低下し、体内の水分や電解質のバランスに影響が及ぶためです。
体内の水分レベルの低下、すなわち脱水症状は、身体の疲労感を増加させると同時に、集中力、記憶力、判断力の低下を引き起こします。疲労感や頭痛を引き起こすこともありますよね。
イライラやストレス感、そして時にはうつ症状を引き起こすこともあります。
したがって、健康を保つためには十分な睡眠は大切ですが、忙しい若者にとっては睡眠時間を確保するのは簡単ではありません。
睡眠と幸福を専門とする、米国ストーニーブルック医療センター(Stony Brook Medicine)のマシュー博士は、「忙しい人でも、計画的な介入により、いまより長く睡眠をとることができるか」という問いに興味を持ちました。
さらに、そのような睡眠時間の延長が、身体の健康にどの程度の改善をもたらすのかにも関心を抱きました。
これらを検証するために研究者らは、授業や社交で忙しく、不規則な睡眠パターンになりがちな大学生を対象に、小規模な実験を行ったのです。
結果、1時間ほど睡眠時間が伸びることで、身体の健康指標、心の状態、および体の水分レベルに良い影響を与えることがわかりました。