「あとちょっと」寝るのは健康への第一歩かも!
研究者らは、心身ともに健康な12名の大学生(主に女性、年齢は18~23歳、平均BMIは24.5)を対象に、2週間にわたる睡眠実験を行いました。
この期間、参加者は、睡眠パターンと身体活動レベルを測定するためにモニタリング装置(腕時計型と加速度計)を装着しています。また、日中の眠気レベルは参加者自身による自己申告で評価されました。
加えて、血圧や心拍数の測定、標準化された食事に対する代謝反応の記録が行われ、水分レベルを測るために尿サンプルが採取されています。
最初の1週間は、参加者は通常の睡眠習慣を維持し、身体数値の測定のみを実施。次の1週間は、参加者に「毎晩1時間ずつ睡眠時間を延ばす」よう、研究者らが介入しました。
この介入により参加者の睡眠時間は、一晩あたり平均約43分増加しました。そしてこの、1時間にも満たないわずかな睡眠延長は、以下のような結果につながったのです。
-
- 自己申告で「眠い」と答えた人が顕著に減少した
- 血圧が低下した
- 食後の血糖値の急上昇が抑えられた
- 血糖値が基準値に戻るまでの時間が短くなった
- じっと座っている時間が平均44.3分短くなった
とくに興味深いのは、睡眠時間の延長が体の水分レベルにも良い影響を及ぼしたことです。
具体的には、尿の浸透圧低下として確認されました。尿の浸透圧は、体内の水分状態を反映しており、尿中の物質濃度が高い(浸透圧が低い)ほど、脱水状態であると考えられます。
「健康に良いことをしよう!」というと、早起きして走ったり、ウォーキングしたりと、少々面倒なことが思い浮かびます。
しかし、そのような努力をしなくとも、「1時間余計に寝る」という贅沢が、健康への道を拓いてくれるのかもしれないというのです。
とはいえ、本研究の対象はわずか12人。なおかつ睡眠介入をしたのは1週間と非常に小規模な研究です。対象は大学生に限定されているため、一般化には少々無理があります。
これらの知見の妥当性を確認するためには、より大規模かつ多様な集団での再現が必要です。とはいえ、この研究の主張は既存の睡眠研究の報告と矛盾するものではなく、また睡眠時間を1時間追加する努力に大きな悪影響があるとは思えないので、健康のために実践してみる価値はあるでしょう。
研究者らは、「高齢者や慢性疾患患者など、さまざまな集団に本研究の結果が適用できるか」が今後の課題であると述べています。