宇宙では、「いつもの」コーヒーブレイクを楽しめない
国際宇宙ステーション(ISS)などの無重力下(正確には微小重力下)でも、コーヒーを飲むことはできるのでしょうか。
もちろん、簡単に飲むことができます。
他の飲料と同じく、パックの中にコーヒーを閉じ込め、ストローで吸えばよいのです。
しかし、ISSに1年余り滞在したNASAの宇宙飛行士ドナルド・ペティット氏は、「パックとストローで液体を飲むことは、それほど楽しいものではない」と伝えています。
「コーヒーを飲む」ことに関しては、特にそう言えるかもしれません。
宇宙で自撮りを。そんな事が、メインではなく、コーヒーの話。私はコーヒーが大好きで、地球ではほぼ毎日飲んでいたのですが、今は飲みません。美味しくないんです。気づきました!私はコーヒーの香りが好きだったことに。パック+ストローでは。。。 pic.twitter.com/GVBDewmo6t
— 油井 亀美也 Kimiya.Yui (@Astro_Kimiya) August 20, 2015
私たちがコーヒーブレイクに求めているのは、ただコーヒーを胃の中に流し込むことではないのです。
まずコーヒーの注がれたカップを持ち上げて香りを楽しみます。
次にカップを傾け、“ズズズッ”とコーヒーをすすり、ホッと一息つく。
この一連の動作がとても大切なのです。
しかし、「カップを傾けて飲む」という動作は、上図のように重力のある環境だからこそできることです。
重力が働くからこそ、カップを傾けてもコーヒーの面は水平を保っており、私たちは、カップの縁からこぼれそうになるコーヒーをすすることができるわけです。
また無重力下では、カップにコーヒーを注ぐことはできても、コーヒー(液体)は、カップの壁を濡らしながら、外にはい出てしまいます。
注ぐ勢いが強ければ船内のあちこちに水球が飛び散ることもあるでしょう。
もしくは、表面張力により、液体がカップの底や内側に張り付いたたまになり、カップを傾けてもなかなか飲むことができないかもしれません。
つまり宇宙飛行士たちが「いつものように」コーヒーブレイクを楽しむことは簡単ではないのです。
それでもNASAは、「スペースカップ」と呼ばれる特殊なカップを開発することにより、無重力下でも「カップを傾け、コーヒーをすする」ことを可能にしました。