小数点「. 」は1440年代のイタリアで発明された?
トリニティ・ウェスタン大学の数学史家であるグレン・ヴァン・ブランメレン(Glen Van Brummelen)氏は、中世ラテン語で書かれた天文学論文『Tabulae primi mobilis B』を熟読している中で、この驚くべき発見をしました。
この論文はイタリアの数学者で天文学者でもあったジョヴァンニ・ビアンチーニ(Giovanni Bianchini、1410〜1469年頃)によって書かれたものです。
ビアンチーニはヴェネツィアの商人として働いた後、当時のフェラーラ公国を支配していた有力貴族のエステ家の財産管理者となりました。
彼は資産の管理や投資アドバイスだけでなく、占いのための星図表の作成も任されていたため、数学と天文学に深く通じていたのです。
ビアンチーニは惑星の動きから日食の予測まで、さまざまなトピックについて研究し、1440年〜1460年にかけて5つの論文を執筆しました。
そのうちの一つが1440年代に執筆された『Tabulae primi mobilis B』です。
論文内には三角関数表の数字がずらっと並んでおり、ビアンチーニはその中で「. 」を用いた小数点表記や計算を行っていました。
ブランメレン氏はその一例として「10.4」という小数を挙げています。
氏によると、ビアンチーニは10.4に8をかけて83.2という数字を導き出していたという。
これは「彼が現代の私たちと同じような小数の表記を使って、計算する仕方を知っていたことを意味している」とブランメレン氏は話します。
同氏はこれを受けて、現代式の小数点「. 」の表記法はビアンチーニによって1440年代に発明された可能性があると指摘。
加えて、1593年に同じ「. 」を使ったクラヴィウスは、ビアンチーニの表記法を模倣しただけなのかもしれないと話しました。
ビアンチーニは高名な数学者・天文学者として名が残っていたため、同じ数学と天文学の道に進んだクラヴィウスが彼の業績を知っていたとしてもおかしくないと指摘します。
ただし、ビアンチーニとクラヴィウスが使用した小数点の表記は、いずれも近年まで見過ごされてきたものであり、小数点「. 」を広めたのは一般的にはスコットランドの数学者ジョン・ネイピア(1550〜1617)の功績とされています。
ネイピアの死後に出版された論文『Mirifici logarithmorum canonis constructio』(1619)の中に、小数点「. 」が使用されており、これを機に多くの数学者が同じ少数表記を使い始めたと考えられています。
しかし、こうした数学史の流れは今回の新発見からも分かる通り、いまだに曖昧な点が多いものです。
もしかしたら古い書物の中には、ビアンチーニ以前に小数点「. 」を使用した例がまだ隠されているかもしれません。