生命の起源は火山雷で固定された窒素かもしれない
フランス、パリテール大学アデライン ・アロスケイ氏らの研究グループはさまざまな火山で堆積物を調査し、各所でたくさんの硝酸塩を発見しました。
これらの成分を分析したところ硝酸塩に含まれる窒素は火山にもともと含まれていた成分ではなく、大気中の窒素を取り込んだものである可能性が高いといいます。
研究者たちはこの硝酸塩が火山からふきあがる水蒸気、火山灰、火山岩などの摩擦電気から生じる火山雷によるものではないかと考えました。
もともと雷には大気中の窒素を固定し、循環させる役割があることが知られています。
雷の電気と高温によって、空気中の窒素分子と酸素分子が分解して原子となり、だんだん温度が下がるにつれ窒素原子と酸素原子が結合することで窒素酸化物となるのです。
それらが雨に溶けて地中でしみこみ、硝酸塩となります。
火山噴火で生じる火山雷でも大気は電気を帯び高温になるため、大量の窒素固定が起きると推察されます。
そして、この大量の硝酸塩から生命が生まれた可能性があるのです。
生命に欠かせない硝酸塩
硝酸塩は地球上の生物の多くが生命活動に利用している窒素化合物です。
細胞を作るアミノ酸やタンパク質の材料となるもので、植物は地中の硝酸塩などの窒素化合物と炭水化物を組み合わせてアミノ酸を作っています。
硝酸塩は植物の肥料としても与えられるくらい植物の成長を促す成分であり、硝酸塩を大量に生み出す雷も植物の成長を促します。
雷の別名である「いなづま」は漢字で「稲の妻」と書きますが、これは雷雨の後は稲穂の実りがよくなったことが由来だと言われています。
無機物である硝酸塩ですが、生命を作り育てるのには不可欠な成分なのです。
ただし、生命の誕生には硝酸塩だけでなくアミノ酸からタンパク質になる過程も重要です。
実は、アミノ酸がタンパク質になる過程も硝酸塩が火山雷に由来しているのと同様に火山活動が関係した可能性が指摘されています。