誤った治療で鼻炎が長期間改善しない可能性
セダガット氏らシンシナティ大学の研究チームは、アレルギー性鼻炎だと主張する219人の参加者を対象に、診断調査を行いました。
すると、実際参加者の91.3%がアレルギー性鼻炎でしたが、同時に45.2%の人が、慢性副鼻腔炎も同時に患っていたのです。
このことは、参加者の主張のほとんどは正しいものの、その半分近くは、知らないうちに慢性副鼻腔炎も併発していることを示しています。
それら患者たちの多くが、自分の鼻づまりや鼻水の症状は、「単にアレルギーが原因で生じている」と勘違いしていたのです。
セダガット氏は、患者がそのように考えるのも無理はないとフォローし、次のように述べています。
「この地域(シンシナティ・オハイオ川渓谷地域)で育った者として、私たちがいかに鼻のトラブルをアレルギーのせいだと考える傾向にあるか証明できます」
地域によっては、その独特な環境ゆえ、アレルギー症状が強く出たり、発症しやすかったりします。
日本でも鼻のトラブルは花粉症が一般的なため、ほとんどの人は鼻水・鼻詰まりがひどいとなると花粉やハウスダストが原因と考えてしまいがちです。
そしてセダガット氏は、「自分はアレルギー性鼻炎だけ」だと勘違いしている患者について、「彼らはずっと慢性副鼻腔炎も患っていたため、アレルギー性鼻炎の治療だけ行っていてもその症状が軽減されません」と語っています。
「アレルギー性鼻炎の治療は、慢性副鼻腔炎には効果がない」のです。
実際、「慢性副鼻腔炎だと診断された患者の約半数は、慢性副鼻腔炎の好ましい治療法の1つである鼻腔内のステロイドスプレーによる治療を受けていなかった」と報告しており、正しい診断と治療の重要性を強調しました。
彼が担当したある患者は、20年以上もアレルギー性鼻炎の治療を受けてきましたが、症状が緩和されませんでした。
しかし、実は慢性副鼻腔炎だったと分かり、適切な治療を開始したところ、たったの数カ月で症状が緩和されました。
今回のような問題は、アメリカには日本と異なり国民健康保険がないため、基本的に医者にかからず自身で症状を判断し市販薬で対処しようとする人が多いことが原因の一つにあるかもしれません。
実際今回の研究でも、参加者の多くは過去3カ月以上、医師の診断を受けておらず事故の判断でずっと抗ヒスタミン薬(アレルギー用の薬)を利用していた人が多かったといいます。
なら日本人はすぐにお医者さんにかかるので問題ないのか、というとそうとも限りません。
アメリカでは医師免許の他に、専門医資格が厳格に定められていて、医師は自分の専門とする症状以外を治療すると違法になります。しかし日本にはそういった厳しい決まりはありません。
そのため、日本ではアメリカと異なり専門医を意識する人が少ないという問題があります。
読者の中にも、具合が悪いと何でもかんでも近所の内科で診てもらっていて、その医師の専門が何なのかはあまり気にしたことがないという人もいるでしょう。
アレルギー性鼻炎と慢性副鼻腔炎の区別は専門医でも難しい場合があり、病院で診察を受けても併発していることを見逃す可能性があることを今回の研究は報告しています。
そのため、誤った診断により効果のない治療をずっと続けて症状が長期間改善しない人が日本にも多く存在する可能性があります。
では、自分が慢性副鼻腔炎を患っているとどのように知ることができるでしょうか。
当然、専門医による診察は欠かせません。
とはいえ自身でも症状を自覚するためのヒントは欲しいところです。
今回の研究チームは、調査の結果から、慢性副鼻腔炎を患っている人に見られる傾向についても報告しています。
それによると、「年齢が高く、男性であること」や「中程度以上の鼻づまりや濃い鼻水」「味覚と嗅覚の低下(程度を問わない)」などは、慢性副鼻腔炎と強く関連しているようです。
既によく知られている情報もありますが、こうした点を理解することは専門医の診察を受けようと患者を動かす点で効果的でしょう。
自分がアレルギー性鼻炎だと感じていたとしても、長期間症状が緩和されず、上記に当てはまるなら、セカンドオピニオンなども利用してきちんとした診察を行うことを検討してください。
もしかしたら、あなたも慢性副鼻腔炎を併発しているのかもしれません。