生物界一硬い「マグネタイトの歯」を持つヒザラガイ
ヒザラガイは正式名称を「多板綱(たばんこう:Polyplacophora)」といい、イカやカタツムリ、二枚貝と近縁関係にある軟体動物の一群です。
平たい体で、背面には8枚の硬い殻が一列に並んでおり、岩場にくっついて生活しています。
また殻の周囲に広がる柔らかい足を使って、ゆっくりと移動することもできます。
ヒザラガイは海洋生物の中では地味な立ち位置にあり、人々の注目も集まりませんが、特筆すべき特徴を持っています。
例えば、ヒザラガイはお腹側の前方に細かい歯を持っていますが、それらはすべて「磁鉄鉱(マグネタイト)」という鉱物でコーティングされているのです。
磁鉄鉱は生物が作り出すものとして最も硬い物質といわれています。
ヒザラガイはこの頑丈な歯を使い、岩場に生えた藻類などをこそげ取って食べているのです。
加えて、ヒザラガイの目は他の軟体動物のように柔らかい組織には存在しません。
その代わりに彼らの目は背面の硬い殻の中に直接埋め込まれているのです。
研究主任の一人であるダニエル・スパイザー(Daniel Speiser)氏は「ヒザラガイのように殻の中に目を入れている生物は他に知られていない」と話します。
では実際にヒザラガイの目はどのようになっているのでしょうか?