イソギンチャクに刺されないクマノミの粘液には何が含まれているのか?
多くの人にとって、イソギンチャクを住処にするクマノミの映像は見慣れたものでしょう。
クマノミはイソギンチャクの外敵を攻撃する衛兵になるだけでなく、クマノミの糞便はイソギンチャクにとって栄養になります。
またクマノミが触手内部を動き回ることで新鮮な酸素が供給され、イソギンチャクの成長を支えています。
一方、イソギンチャクは獲物を捕らえたり外敵から身を守るために、体の表面から毒針(刺胞)を発射する仕組みを持っており、この毒針は自分やクマノミを襲おうとする外敵を攻撃する防衛にも用いられます。
イソギンチャクの毒は、細胞を溶かす「細胞融解素」、神経に障害を与える「神経毒」、炎症や痛みを与える「ホスホリパーゼ」などさまざまな有毒成分の混合物からなり、エサとなる微生物にとっては致命的なもので、大型の生物にとっても脅威になります。
このように両者の共生には明確な利益があるため、クマノミとイソギンチャクは「生まれたときからずっと仲良し」と思っている人も多いかもしれません。
しかし最近の研究で、イソギンチャクはクマノミが相手であっても新参者なら容赦なく攻撃しており、両者が共生関係になるまで24~48時間が必要であることがわかってきました。
一方で、共生関係を結んだクマノミに対してイソギンチャクはほとんど刺すことがなく、クマノミたちは無傷で過ごすことができます。
これまでクマノミがイソギンチャクに刺されないで過ごせるメカニズムは「クマノミの分泌する粘液がイソギンチャクの棘発射を抑えるから」と説明されていました。
しかし、両者が出会って48時間はクマノミが攻撃されるという事実を踏まえると、このメカニズムは既存の理解よりもっと複雑なものの可能性があります。
そこで今回、フリンダース大学の研究者たちは、イソギンチャクに共生する前と後で、クマノミの表面の粘液成分にどんな変化があるかを調べることにしました。