過酷な太陽系外惑星で色鮮やかな光輪が発生か!?
科学者たちが、ESAの宇宙望遠鏡CHEOPS(ケオプス)が収集したデータを確認したところ、太陽系外惑星「WASP-76b」の昼側と夜側の境界で、異常な明るさを発見しました。
研究チームの1人、ポルトガルのポルト大学(University of Porto)に所属するオリビエ・デマンジョン氏は、次のように述べています。
「太陽系外惑星の明るさに、これほど急激な変化が検出されたのは初めてです。
そして、この予期せぬ輝きは、強力で局所的かつ異方性の反射、つまりブロッケン現象(glory effect)によって引き起こされた可能性がある、との仮説を立てました」
ブロッケン現象は虹のような光輪が生じる現象をいいますが、虹とブロッケン現象は発生原理が異なります。
虹ができるのは、ある密度の空間を進む太陽光が別の密度の空間(例えば空気から水など)に入った時に起きる屈折が原因で生じます。
この光が曲がる角度は、光の波長によって異なります。光の色は光の波長で決まっているため、このとき光は色の成分ごとに分解された状態になり、これが我々には虹に見えるのです。
雨で虹が見えるのは、雨粒の中で光がこの屈折を起こしているためです。
一方、ブロッケン現象は、屈折ではなく反射に近い現象です。
地球上で起きるブロッケン現象は、自分の後ろから指している日光が雲や霧に当たったとき、虹色の光輪のように見える現象を指します。
光が単純に何かに当たって戻って来る場合、これを反射と呼びますが、ブロッケン現象では霧などの細かな粒子に当たった光が、屈折と似たような原理で、光の波長ごとに分裂して戻ってきます。
こうした現象は反射とは区別されていて、後方散乱と呼ばれます。
これは観察者からの距離と視線の角度によって異なる色の光が戻ってくる状態になるため、虹色のリングが生じているように見えるのです。
このブロッケン現象と呼ばれる色鮮やかな光輪現象は、地球上では飛行機に乗っているときに稀に見られることがあり、特にドイツのブロッケン山でよく見られたため、この名で呼ばれています。そして、地球以外では金星で1度確認されただけです。
地球でも大気と太陽光の関係で見る条件が難しいこの現象が、太陽系外惑星で確認されたとなると、これは非常に珍しい発見となります。
デマンジョン氏は次のように説明します。
「太陽系外でこれまでブロッケン現象が見られなかったのには理由があります。
非常に特殊な条件が必要だからです。
まず、大気中の粒子は完璧に近い球形、また完全に均一で、長期にわたって観測できるほど安定している必要があります。
また惑星の近くにある恒星が直接惑星を照らし、観測者(ここではケオプス)がちょうどよい方向からこれを見ている必要があるのです」
そのため、WASP-76bで観測された明るさの変化が、本当にブロッケン現象であるなら、太陽系外惑星の上層大気の組成について、新たな情報が得られたことになります。
「鉄の雨が降る過酷な惑星で、上記のような大気の安定性がある」ことになるのですね。
とはいえ、検出された信号は微弱であり、今回の仮説が正しいと断言するには、さらなる研究が必要になります。
それでも、「このように色鮮やかな光輪が太陽系外惑星で見られるかもしれない」という可能性は非常に興味深いトピックであり、デマンジョン氏も「この特徴がデータから現れた時は、特別な満足感があった」と締めくくっています。