ミドリムシは栄養価の高い「スーパーフード」
ミドリムシ(学名:Euglena gracilis)は今から5億年も前に誕生した微細生物です。
名前に「ムシ」と付いていますが昆虫とはまったく関係なく、ワカメやコンブと同じ藻類に属します。
その一方で、ミドリムシは葉緑体で光合成をして栄養分を作りながら、細胞を変形させて自ら動き回るという、「植物」と「動物」の両方の性質を兼ね備えた興味深い生物です。
そう言われると、植物が動物へと変化することがあるの? という疑問が浮かびますが、これは原始的な捕食性の真核単細胞生物が藻類を食べて、そのまま細胞内に共生させた状態とされています。
こうしてミドリムシは2つの生物の性質を持つゆえに、肉と野菜に含まれる栄養をどちらも持っています。
そのため、ミドリムシはスーパーフードのひとつとして食品利用が進んでいるのです。
(※ 食品などの商用としてはミドリムシではなく、学名の「ユーグレナ」の名称が用いられています。さすがに「ムシ」とあると口にしにくいですからね… )
実際に株式会社ユーグレナは世界で初めて、ユーグレナの屋外大量培養に成功し、ユーグレナを使った健康食品、飲料、お菓子、サプリなどを作っています。
そしてユーグレナが持つ栄養素のひとつとして、特に注目されているのが「カロテノイド」です。
カロテノイドは黄色や赤色の色素を持っており、ユーグレナでは赤色の眼点の中に含まれています。
カロテノイドには活性酸素を取り除く抗酸化作用があるだけでなく、継続的な摂取により血糖値の上昇を抑制したり、眼病を予防することが報告されてきました。
しかし一方で、ユーグレナが自然に持つカロテノイドの量は少なく、その生産効率を向上させる手法も知られていません。
食品の栄養素でユーグレナを培養できる?
その中で、研究チームはユーグレナの食品利用の拡大を目的に、大豆や乳製品、卵を用いたユーグレナ細胞の増殖、海苔や煮干しを使ったユーグレナの培養方法の開発を行ってきました。
これは食品にさまざまな栄養成分が入っており、それを使うことでユーグレナを効果的に培養できると考えられているからです。
チームは他にも、トマトジュースを用いた安価な培養方法も開発しました。
こうした知見を踏まえて、チームは「適切な食品の栄養素を含む培地で培養することで、ユーグレナのカロテノイド含量を増加させられるのではないか」と仮説を立てました。
そこでチームが新たな培地として選んだのが、私たち日本人になじみ深くて栄養価の高い「かつお出汁」でした。