体の周りにできる僅かな気泡で呼吸する
昆虫には脊椎動物のような肺やエラは存在しませんが、腹部に気門という穴があって空気の出し入れを行っています。
そして入り込んだ空気は気管と呼ばれる管を通り抜ける過程で、酸素と二酸化炭素、そして水分の出し入れが行われます。
冬眠中のマルハナバチの女王はこの気門を開閉することで、体が水分を失い過ぎないように調節でき、長期に渡る閉塞も可能となっています。
また昆虫の体は防水性のあるクチクラでできた表皮で覆われており、水が勝手に体内に入り込むことも防止しています。
しかし水没した状況ではそもそも空気がありません。
そこで研究者たちは、体の表面と水の間にできた気泡が重要な役割を果たしていると推測しています。
冬眠中は必要とする酸素が極端に低下するため、体と水の間にできた僅かな気泡でも呼吸に使える可能性があるからです。
さらに以前の研究では、昆虫のサナギを長期間水没させ引き上げたところ、引き上げと同時に大量の二酸化炭素を放出させ、嫌気呼吸で蓄積していた乳酸に対処していることが示されました。
嫌気呼吸とは酸素を使わないタイプのエネルギー生産方法であり、細胞への酸素供給が少ない場合に起こります。
研究者たちは体と水の間にできた僅かな気泡と嫌気呼吸などの代替方法を駆使することで、マルハナバチの女王が長期間の水没に耐えていた可能性があると結論しています。
これまでの研究でも昆虫の多くが洪水を生き残るための耐水能力を獲得してきたことが示されていますが、多くは卵やサナギに対する研究結果であり、成虫で長期の水没に耐える能力がみつかったのは異例です。
研究者たちは今後、成虫のミツバチなどにも同様のテストを行い、同様の能力が他の昆虫でもみられるか確かめていくと述べています。